ムダのない効率的な経営を目指し、組織をスリム化、フラット化するのが世界の潮流である。わが国でもそれが叫ばれるようになって久しい。しかし実際には期待したほど進んでいないようだ。それどころか大企業や役所のなかには、いったん採用したグループ制を廃止して課長制に戻したり、補佐的なポストを復活させたりする動きも見られる。

スリム化、フラット化はなぜ進まないのか

 スリム化、フラット化に反対する理由として、しばしばあげられるのは次の3つである。

 第1に、スリム化、フラット化すると必然的に管理職の数が減り、1人で多くの部下を抱えるため負担が過重になる。

 第2に、その結果として部下の指導が十分に行えなくなり、部下が不安を訴える。

 第3に、下位の役職が減って係長などの経験がないままいきなり課長等のポストに就くと仕事がこなせない。

 いずれも、もっともらしい理由である。しかし、よく考えてみるとスリム化、フラット化の本質が置き去りにされていることが分かる。組織をスリム化、フラット化する目的の1つは、現場への権限委譲である。それによって組織が機動的に運営され、第一線で仕事をする人たちの意欲と能力を引き出そうというわけである。