したがって、組織の階層を少なくし、管理職の数も削減するのと並行して、現場への権限委譲を進めなければならない。そうすれば、先にあげたようなスリム化、フラット化の弊害も自ずと解消される。

 まず、管理職の負担が大きいのは諸々の仕事を抱え込み、権限を独占しているからである。部下が自分の裁量で仕事を行えるよう実質的に権限委譲すれば、管理職の負担は減るはずだ。そして部下もノビノビと仕事ができるようになる。

 もっとも、これまで部下にこと細かな「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)を求めてきて、いきなり自分の判断でやれといえば戸惑うのは当然である。しかし、一定の期間がたち、自分の判断と責任で仕事をする習慣がつけば不安や戸惑いは消えるに違いない。

 さらに部下に権限委譲して管理職の役割を担当部署のマネジメントに特化すれば、いきなり課長職に就いてもこなせるようになる。現に海外の企業ではMBAを取得した若者がいきなり管理職に就くケースも珍しくない。

管理職層から精鋭を引き抜いてシニアプロに

 にもかかわらず、組織のスリム化、フラット化と部下への権限委譲が進まなかった背景には、管理職の既得権維持という本音がある。

 もっとも管理職が地位と報酬を手放したがらないのは無理もない。強引にそれを奪えば、彼らの士気を著しく低下させるのは間違いない。したがって彼らの地位と報酬を維持しながら、組織の効率化と部下のエンパワーメントを両立させる道を探ることが望ましい。

 かつてポスト対策として設けられた専門職や専任職は、管理職に就けない人の処遇を目的としたものだったため、専門性の発揮を期待することが難しかった。しかし現在は、本物のプロとしての人材が各方面で求められている。その一方で上述したように管理職としての仕事を限定すれば、必ずしもスター的な人材でなくも管理職が務まる。

 そこで発想を逆転させ、分厚いミドル層の中からとくに優秀な人材を引き抜き、シニアプロフェッショナルとして活用することを提案したい。彼らには新規事業の開拓、他社との連携や交渉といった「攻め」の仕事に携わってもらう。あるいは経営陣を補佐するスタッフとして働いてもらう。