プロとしての責任感と意欲を持たせるには、まず自分の名前を出して仕事をさせることから始めるべきである(画像はイメージ)

「顔のない組織人」による不祥事が続発

 大企業で次々と発覚したデータの改ざんや事実の隠蔽。政治問題にまで発展した政治家の口利きと官僚の忖度。決定のプロセスが不透明なままで推移した東京都の卸売市場移転──。

 世間をにぎわした組織不祥事には共通する特徴がある。それは「顔のない組織人」によって引き起こされていることである。

 彼らはけっして問題人物だったわけではない。それどころか、大抵がとても勤勉で組織に忠実な、ある意味では模範的な組織人である。それだけにいっそう始末が悪い。

 わが国では自己アピールしたり、自分の名前を前面に出したりすることは「はしたない」とされ、陰徳を積み、縁の下の力持ちとして働くことがよしとされてきた。たしかに、そのような人物が必要とされたことは事実である。

 しかし、「組織のため、上司のため」に尽くすことが「世のため、消費者や国民のため」になるとはかぎらない。そして匿名文化のもとでは責任の所在があいまいになり、組織エゴがはびこりやすいという欠点がある。