ヒアリの侵入を機に、もっと今議論すべきことがある。(写真:Alamy/アフロ)

 ヒアリ日本上陸の報告が続いている。

 2017年6月9日兵庫県尼崎市のコンテナ内で確認されたことを皮切りに、6月18日神戸市、6月30日愛知県弥富市、7月3日大阪府大阪市、7月6日東京港でもヒアリの存在を確認。さらに7月14日には横浜港、神戸港、7月21日に博多港でもヒアリが見つかった。

 中でも神戸市尼崎市や横浜港では、さなぎや幼虫が合計数百個体発見された。これはコンテナ内や港内での繁殖の可能性を示唆するものだった。ヒアリの定着を防ぐため、引き続き周辺域の調査と防除を進めていくことが必要だ。

メディア報道の懸念点

 ヒアリは「ソレノプシン」というアルカロイドを含む毒を持っており、毒針で刺されると激しい炎症を引き起こす(ネット上では「ヒアリ」とされる昆虫を生で食している人の動画が紹介されているが、これは話題づくりにしても悪質だ)。攻撃的なうえに繁殖力も高く、しかも人と生活環境が重なる。そのため日本で分布を広げていく危険性は、周知されるべきだ。

 ただ、昨今のメディアによる報道を見ていると、刺された際の人体や家畜への直接的な被害にばかり焦点が当てられている。恐怖心をあおられ、アリ用殺虫剤の売上が増加しているとも聞く。冷静な対処を、と呼びかけるのもよいのだが、そもそもヒアリの定着を防ぐ目的はこれだけなのか。重要な問題を見過ごしていないだろうか。

ヒアリは単なる「害虫」か

 これまでの報道は、ヒアリをあたかも単なる「害虫」のように捉えてしまっているように見える。「害虫」を片っ端から駆除し、消失させれば今回の問題は解決するだろうか。