マイクロファイナンスとは、公的な金融サービスの対象からは除外される開発途上国の貧困層に融資や貯蓄、保険などのサービスを提供し、事業のスタートアップを支援することによって生計向上を後押しする仕組みのこと。

 バングラデシュのグラミン銀行が有名だが、近年はミャンマーでも急速に普及しており、マイクロファイナンス機関の参入が相次いでいる。2013年に同国で設立され、15年からマイクロファイナンス事業を開始したMJIもその一つ。

 ヤンゴンやバゴー近郊の農村で展開している同社は、毎週決まった日に支店に顧客を集めて融資を行い、返済金の回収は村の家々で行うのが基本的なスタイルだ。

 いつもの回収業務が終わった後でMango!を紹介していた先ほどの青年は、同社のアウン・コー・ミンさんだ。

 「病気の予防法はテレビで見たことがあるけれど、内容は忘れてしまったの。冊子だと手元に置いていつでも読み返せるから安心ね」

 「子どもの前でも平気でタバコを吸う男性が多くて困っていたので、この冊子を見せてやめるように言うわ」

 女性たちの感想を訳してくれながら、アウン青年はほっとしたような人懐っこい笑顔を浮かべ、丸い瞳をくるん、と回しておどけてみせた。

コミュニケーションツールが欲しい

 Mango!には、導かれるように集まった3人の日本人の思いが込められている。

 発端は、2015年4月にリンクルージョン(本社東京都中央区)を立ち上げた黒柳英哲さんの思い付きだった。

 起業の前に、日本のNGOがミャンマーで行ったマイクロファイナンスの市場調査に参加し、改めてマイクロファイナンスの可能性を確認する一方、融資額や返済金、金利計算など煩雑なデータを効率的かつ正確に管理するITシステムの必要性を強く感じたという黒柳さん。

 その経験を基に、現在は、日本のシステム会社と共に経営情報システム「JBrain」を開発し、マイクロファイナンス機関に低価格で提供するビジネスを進めている。人力によるミスを防ぐとともに、顧客の収支や生業、家族構成、健康状態などを一元的に管理できる、画期的なシステムだ。

Mango!創刊準備号を見せながら、誌面の感想を尋ねる北角さん(右端)、アウンさん(左端)、黒柳さん。読者の反応を踏まえ、5月に創刊号4万部を配布する
JBrainを導入することになったMJIのスタッフにシステムの使い方を指導する 黒柳さん(後列中央)とリンクルージョンの社員(2016年12月、トンティ村で撮影)