振り返ると、バブル崩壊以後、「失われた20年」と言われるほど、経済が低迷している。ヨーロッパやアメリカは経済成長を続けたのに、日本だけが低迷している。理由はいろいろあるけれども、非常に大きな原因の1つに「これ以上無理というほど頑張っている」というのがあるだろう。

 バブル崩壊以後、どこの企業も長時間残業が当たり前になった。かつて残業が長いサラリーマンと言えば官僚や銀行員が知られていたが、バブル以降は全産業にそれが広がった。みな、余裕を失ってしまった。

 余裕を失うとどうなるか。新しいことを試す余裕、改善する余裕を失ってしまうのだ。どうすべきか分かっていても、それさえ実践できないほど、思考力の低下と行動力の低下が起きてしまう。

いつも満杯の手術室

いつも「時間がない」あなたに』という本に、面白い事例が紹介されている。

 複数ある手術室はいつも満杯。深夜に及ぶ手術が毎日続き、医者もスタッフも疲れ切っていた。救急患者が来ても手術室がいっぱいですぐに対応できず、手術室の増設が課題になっていた。

 そこで経営コンサルタントが病院の経営を分析した。その結果、非常に意外な改革案を提示した。手術室を必ず1つ、使用しないで空けておけというのだ。現場のスタッフは大反対した。「今でも手術室が足りないのに!」と。

 ところが。手術室を1つ空けるようにすると、夜中の手術がなくなり、無理のない時刻に予定通りに手術を終えるようになった。救急患者は速やかに手術できるようになった。

 なぜか? 手術室を1つ、救急患者専用にしたからだ。