防衛省庁舎の正門(出所:Wikipedia

 安倍晋三首相は5月3日、改憲派が開いた集会にビデオメッセージを寄せ、その中で「東京五輪が開催される2020年は、日本が生まれ変わるきっかけにすべきだ。新しい憲法が施行される年にしたい」と語った。

 改正の中身としては、9条について「多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が今なお存在する。『自衛隊は違憲かもしれないが、何かあれば命を張って守ってくれ』というのは無責任だ」「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む考え方は国民的な議論に値する」と述べた。また、高等教育の無償化を定める条文も盛り込むという。

 安倍首相の悲願であった憲法改正に、いよいよ本気で取り組むという決意の表明である。

憲法と現実の矛盾を突いた巧みな提起

 9条と自衛隊の問題を具体的な改正例として提示したのは、なかなか考え抜かれた内容であると言えよう。

 憲法9条というのは、「第2章 戦争の放棄」の章に書かれた条文である。第2章は、この9条のみである。

 1946(昭和21)年11月3日に公布された現在の憲法が、多くの国民に歓迎されたことは間違いない。私自身、1948(昭和23)年生まれの団塊の世代だが、1947年から48年にかけて生まれた同級生には、憲一など憲法の「憲」の字を使った名前が少なからずあった。戦争によって国際問題を解決することを放棄した憲法の新理念に、強く共感したからであろう。長く続いた戦争と多くの犠牲、軍部の独走などに、軍事アレルギーともいうべきものが生まれていたこともあったのだろう。