「Wikileaks.org」というトンデモないサイトを最初に見つけたのは確か2009年の春頃だったと思う。まずダウンロードしたのが米情報関係者用防諜マニュアル「Intelligence Threat Handbook」の2004年度版だった。
その後も英国版の防諜マニュアル、中国製のネット検閲ソフトなどを見つけては片っ端から読み漁った。
実のところウィキリークス(Wikileaks)は本コラムを書くうえでも結構重宝していたのである。
この知る人ぞ知るウィキリークスが今年ブレークし、筆者の密かな楽しみがまた1つ失われた。7月にはアフガニスタン戦争に関する米軍・情報機関の機密資料7万5000件を暴露、さらに10月にはイラク戦争関連米軍機密資料40万件が掲載された。
国務省外交電報のリーク
そして今回の米国務省公電25万件である。個々の内容はメディアで報じられている通りだ。今回の情報漏洩はその件数、内容の広範さ、どれをとっても、1回の外交文書リーク事件としては恐らく史上最悪の失態と言っていいだろう。
あまりに量が多すぎて、どこから話すべきか迷ってしまう。しかも、12月2日夜現在で、25万件中公開されているのはわずか593件(1日当たり120件)だ。今後いかなる情報がいつ出てくるか見当もつかない。
米国務省にとっては誠に「お気の毒」だ。機密公電は米軍諜報アナリストの上等兵が国防省のSiprnet(Secret Internet Protocol Router Network)を通じて入手したものらしい。同上等兵は本年5月に逮捕されたそうだが、もう「後の祭り」である。
今回の大失態は9.11事件以降、米国で各省庁間情報共有の迅速化が叫ばれ、米国在外公館のサーバーを国防省のSiprnetに接続したため起きた悲劇だという。情報のリアルタイム分析と機密保護の脆弱化は表裏一体ということなのだろう。
リー・クアンユーの卓越した中国観
これまで暴露された中国関連情報の中で最も興味深かったのは、昨年5月30日、シンガポール建国の父であるリー・クアンユー顧問相がスタインバーグ米国務副長官に語った内容をワシントンに報告した公電である。
以下、リー顧問相の中国関連発言を見ていこう。日本で内容は一部しか報じられていないが、この公電を詳しく読めば、このシンガポールの偉人が中国という存在をいかに冷徹に見ているかがよく分かり、非常に参考になるのだ。