また、誰かを出世させるということは、もともと持っている影響力に会社がお墨つきを与えるということを意味する。お墨つきを与えられ、肩書きやポジションが変わると、セルフイメージはより大きく変化する。

 この時にその人間が、その影響力を生かして組織の一体感を作ろうとするのか、組織の一体感を損ねてでもその影響力を利用して自分の主張を通そうとするのか、いずれの動きをするかで、その会社の命運は大きく変わる。

 前者のタイプの人間を出世させ、経営陣と近いポジションに据えることで組織は成長への道を歩み始める。先のB氏はまさに前者の例と言える。こういった人が組織の一体感を醸成するような動きをする時、その組織は大きな成長を遂げるだけの土壌が整う。

 一方で、後者のタイプの人間を出世させると、何らかの不満を持った時、影で社長や会社の不満を言い、周囲を巻き込んで社内で派閥を作る。場合によっては、それが経営者にとっての抵抗勢力となり、組織が分裂していく。

ドラッカー曰く「権限と権力は全く異なる」

 私は経営コンサルタントとして大小様々な会社を見ているが、会社が内部崩壊する最も多いとも言えるパターンが、このパターンである。そのため、後者のタイプの人間を出世させることは組織崩壊への第一歩となる。

 こう考えると、「仕事ができるかどうか」という判断基準だけでその人間を出世させるということが、いかに危険かがお分かりいただけると思う。

 組織の中でより強い影響力を持たせるかどうかを判断するにあたっては、「仕事ができるか」という基準のみならず、「組織を成長させることができるか」という基準からも見なければならない。

 ドラッカーはこう言っている。

 「権限と権力は全く異なるものである。マネジメントはもともと権力を持たない。責任を持つだけである。その責任を果たすために権限を必要とし、現実に権限を持つ。それ以上の何物も持たない」

 組織の一体感を醸成し、組織を成長させるという責任を遂行しようとする人間にはより高いポジションを与え、より強い権限を持たせる。