一方、組織を成長させるという責任の遂行よりも、自らの主張を優先し、権力を振りかざそうとする人間には、高いポジションを与えてはならず、影響力も抑止していかなければならない。

 組織の成長をもたらすためには、こういった観点から人事を考える必要がある。

 ITの会社を起こし、一代で数百人の従業員を抱えるまでに会社を成長させた方がいる。その方が社長を引退した後にこんなことを話されていた。

 「自分は最後の最後に一番やってはならないミスをした。それは後継者の人選だ」

仕事ができる後継者が1年で会社を窮地に

 その方はITのスキルの高い技術者を後継者候補として専務取締役に抜擢し、大きな権限を与えた。つまり、「仕事ができるか」という基準に重きを置いて後継者の人事を決めた。

 しかし、専務取締役の座に就いて間もなくすると、彼の行動が変化し始める。技術者の視点から自らの考えを一方的に現場に伝えるようになり、現場はこれまでにない指示を受け、混乱をきたすようになる。

 その結果、業績が下がり始めるが、業績が下がった責任を現場に押しつけ、現場の人間を叱責するようになる。現場からは不満の声が上がり、見るに見かねた社長が専務にそのことを指摘するが、彼は自らの非を認めようとはしない。

 とはいえ、優秀な人材であると彼を信じ、社長の座を彼に譲った。それからたった1年、その会社は再起不能なまでの状態に陥ってしまった。

 これは後継者という最も重要な人事において、仕事はできるものの組織を成長させる力のない人材を抜擢した結果、もたらされた悲劇であると言える。

 もし自分が社内で影響力を持つ状況にあると感じているならば、是非、「組織の一体感を醸成し、組織の成長をもたらすためには、自分はどう動けば良いのか」という意識を持つようにしてみてほしい。

 そういった意識を持った人間こそが、経営陣が求める真の優秀な人材であり、組織に繁栄をもたらす存在なのだから。