「誰もが早く帰れる組織」はどうやって実現できるか?

 2016年6月に発表された安倍内閣の「ニッポン一億総活躍プラン」では、働き方改革は一億総活躍社会の実現に向けた横断的課題であると明記された。同年9月には働き方改革担当大臣という新しい大臣ポストが誕生し、初代大臣には加藤勝信衆議院議員が任命された。

 働き方に関する課題はそもそも厚生労働省が管轄しているのだから、今回の働き方改革も厚生労働省に音頭を取ってもらうことも検討されたはずだが、新たに大臣ポストを設置したということは、安倍政権が働き方改革を重要課題として位置づけていることの証左であろう。

 また同じく2016年9月からは、安倍首相自身が議長を務める「働き方改革実現会議」が継続的に開催されている(現時点で2017年2月22日の第8回まで終了している)。この会議で検討するテーマは次の通り、9項目となっている。

1 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
2 賃金引き上げと労働生産性の向上
3 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
4 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
5 テレワーク、副業・兼業などの柔軟な働き方
6 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
7 高齢者の就業促進
8 病気の治療、子育て・介護と仕事の両立
9 外国人材の受け入れの問題

 テーマは多岐にわたっており、働き方改革の範囲もやや広めに取られている(働き方とは直接的に関係なさそうな項目も見受けられる)ものの、どのテーマも、これまで課題だとは言われながらも、政府が本腰を入れて改革の俎上に載せきれなかったことばかりである。会議は年度内に結論を出すことになっているが、その行方を注視しておきたいものである。

好きで仕事をしているのになぜ悪い?

 さて、本稿では、これらのテーマのなかでも特に3の「長時間労働の是正」のことを考えてみたい。

 2016年以降、多くの民間企業で「働き方改革」の取組みが始まっており、その内容には多くの場合「労働時間の適正化」「長時間労働体質からの脱却」など、長時間労働の是正にかかわる活動が含まれている。