安倍首相が年末にハワイ真珠湾(アリゾナ記念館)を訪問する。日本のメディアの多くは、「訪問決定に対して、アメリカ側では歓迎の声が上がっている」といった報道をしている。
それらの報道では、「安倍首相には、今日(12月7日)訪問してほしかった」「もっと早く来るべきだった」「安倍首相は真珠湾攻撃について謝罪するべきだと思う」といった少数の真珠湾攻撃経験者たちの声も紹介されている。しかし基本的な報じ方としては、そうした謝罪云々を口にする人々すら「現在、そして将来にわたって日米が平和な関係を保つことが大切」などと未来志向を語っている状況を紹介し、安倍首相のアリゾナ記念館への慰霊訪問がアメリカで極めて好意的に受け止められている状況を強調している。
日本海軍による真珠湾攻撃についてさしたる知識を持たない多くのアメリカ国民にとって、安倍首相がアリゾナ記念館を慰霊しようがしまいが、何ら関心事ではない。しかし、多くの軍人や退役軍人、それに教養人など真珠湾攻撃を知る(どの程度の真相を知っているのかは問わず)人々にとっては、確かに日本の首相による真珠湾アリゾナ記念館の慰霊訪問は大きな関心事であり、日本のメディアが伝えているように歓迎の声が上がっている。
ただし、日本側としては、なぜ歓迎の声が上がっているのかを認識しておく必要がある。
真珠湾と広島・長崎はワンセット
アメリカ側から歓迎の声が届くのは当然である。なぜならば、安倍首相の慰霊ツアーは、オバマ大統領の慰霊ツアーと一対のものとみなされているからだ。実際、この点を日本政府は警戒して、管官房長官も「オバマ大統領の広島訪問と関係するものではない」とあえて明言している。