電通の過労自殺事件をきっかけに、日本人の働き方があらためてクローズアップされている。日本で長時間残業がなくならないのは、前近代的な社風など社会的な側面もあるが、最大の要因は日本企業が高い付加価値を作り出せず、生産性の低い状態を続けているからである。
残業時間規制など、当面の労働時間を減らすといった対策は重要だが、生産性の低い状況を放置したまま、対症療法ばかり繰り返していると、供給制限から生産が減少するといった副作用すら発生しかねない。企業の付加価値という部分にメスを入れなければ抜本的な改善は難しい。日本人は過去20年、付加価値の問題から目をそらし続けてきたが、それも限界に来ている。
日本の生産性は主要国で最低という厳しい指摘
今年9月に公表された2016年版労働経済白書はかなりショッキングな内容であった。日本の労働生産性が低いことは以前から知られていたが、それを完全に裏付ける結果となっていたからである。
白書によると日本の労働生産性は、主要先進国の中でもっとも低く、フランス、ドイツ、米国の生産性は日本の約1.5倍もあった。実質値、名目値とも同じような結果となっているので物価の水準は関係ない。純粋な生産性の問題と捉えてよいだろう。
さらに厳しいのが製造業の状況である。かつて日本は、製造業の生産性は高く、サービス業の生産性が低いと言われていたが、今となってはこの法則もあてはまらないようである。製造業の実質労働生産性の水準は米国、ドイツ、フランスと比較すると2割から3割も低くなっている。