少子高齢化は、高齢の入院患者や要介護者の増加を招き、病院や介護施設の不足を生んでいる。結果、これまでのように特定の施設で1人のケアをすべて行うのは難しくなりつつある。
一方、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で適切な医療や介護、生活支援などのサービスを受けながら、いかにして自立して生活することができるかが重要なポイントとなってきた。そこで、地域の行政機関や医療機関、介護福祉施設など、関係する様々な機関が連携して医療や介護を行う「地域包括ケア」の必要性が叫ばれている。
ただし、高齢者が自立して生活するためには、そうしたケアのみでは必ずしも十分ではない。高齢者が地域の人々と交流し、また地域が高齢者を支え合う仕組みも必要である。しかし、少子高齢化はこうした支え合いの基盤であった、町内会や自治会といった既存の「地域自治システム」の消滅を招いている。
そんな逆風の中、地域の人が主体となって連携の新しい仕組みづくりに成功した場所がある。大分県臼杵市だ。行政と医師会のキーパーソンたちが中心となって、医療・福祉において、あらゆる機関が連携したネットワークを構築した。また、地縁にもとづく新たな支え合いの仕組みを作り出すことで、高齢者が住民に見守られながら生き生きと生活することのできる環境を生み出したのだ。
臼杵市の取り組みとは、どんなものなのか。行政学や地方自治論を専門とする國學院大學法学部の稲垣浩准教授の話を元に紹介したい。