石川県輪島市の上空からの眺め(2006年5月撮影)。 Photo by Adam Kahtava, under CC BY 2.0.

 少子高齢化や地方の過疎化により、かつての町内会や自治会といった「地域自治システム」が崩壊している自治体も少なくない。それらが招くのは、地震や豪雨といった災害時の防災や福祉分野への対応がおろそかになることだ。

 いくつかの自治体では実際にそうした問題に直面し、対策に取り組んでいる。たとえば石川県輪島市では、震災の経験から、防災と福祉の分野で先進的な取り組みに着手し、成果を挙げつつある。失われた町内会や自治会を再生させるだけにとどまらない“新たな地域自治システム”の構築が始まっているのだ。

 輪島市の地域自治システムの特徴は、病院や介護施設、NPOといった既存の施設や組織が巧みに連携していることである。そのシステムは、仕組みづくりをけん引するリーダーや、各機関の連携を担うコーディネーター、実際に動くプレイヤーといった“地域のキーパーソン”がいたからこそ実現することができた。

 輪島市の取り組みとは、どんな内容なのか。行政学や地方自治論を専門とする國學院大學法学部の稲垣浩准教授の話を元に紹介したい。

國學院大學法学部の稲垣浩准教授。東京都立大学大学院社会科学研究科政治学専攻博士課程単位修得退学。北海学園大学法学部講師を経て現職。博士(政治学)。主著に『戦後地方自治と組織編成--「不確実」な制度と地方の「自己制約」』(吉田書店)など。