雇用・解雇を容易に、反発招いた仏労働法改正案 議会を強行通過

仏西部ナントで行われた労働法改正法案の下院での強行通過に反対するデモで、警察の機動隊と衝突するデモ参加者ら(2016年5月10日撮影)。(c)AFP/JEAN-SEBASTIEN EVRARD〔AFPBB News

 フランスのオランド政権が最大の危機を迎えている。2017年春の大統領選を1年後に控え、労働法改正を巡って社会党が内部分裂に陥っているのだ。

 労働法改正の背景には、恒常的な約10%の高失業率問題がある。その要因として挙げられているのが、従業員に極めて有利に定められている現行の労働法だ。

労働法で強固に守られている労働者

 日本でも正規の従業員を解雇するのは難しいが、フランスの場合は「1人を解雇するのに、労働法の専門家3人が弁護士とともに3年がかりでやっと成功する」と言われるくらい困難だ。そのため、企業は正規の従業員の雇用には慎重にならざるをえず、従って失業率も改善されない。

 また、現行の労働法では労働時間の「週35時間まで」という制限や「有給休暇5週間」の保障が規定されているほか、公共交通網や飲食業などを除いて、デパートをはじめブティックなどは原則的に「日曜閉店」とされている。こうした規定から、「フランス人は働かない」「労働者天国」などの批判も生んでいる。