こうして軽減していた「誰かと食事」の心理的負担

ビジネスパーソンの孤食と共食が意味するもの(前篇)

2016.04.08(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
「ぼっち食」と「誰かと食事」の一挙手一投足を観察すると意外な事実が(写真はイメージ)

 お勤めの方は、平日の昼食に誰と食事をしているだろうか。職場の同僚とともにという人、上司と営業先で2人でという人、あるいは1人でという人・・・。“昼食の人事”はさまざまだ。

 NTTコムリサーチが2012年に20代以上の人に実施した調査では、平日の昼食は「1人で」という回答が約半分で、「同僚・上司とともに」が約3割だったという。

 1人でとる食事は「孤食」とよばれ、ほかの人ととる食事は「共食」とよばれる。これらの言葉があるのは、それだけ人びとが「誰とどう食事をするか」に関心がある現れともいえるだろう。

 孤食は気楽だけれどちょっとさびしい。かといって共食はさびしくないけれど話しながら食べるのはちょっとたいへん。そんなことを日々感じている人もいるのではないか。

 そんな孤食や共食の最中に、人が具体的にどんな行動をとっているかを分析している研究者がいると知って話を聞くことにした。応じてくれたのは、東京電機大学インタラクション研究室研究員の徳永弘子氏だ。「孤食と共食における人の食事行動の仕組み」といった研究論文を発表している。

 前篇では、徳永氏の研究内容を聞き、孤食と共食それぞれで、人がどんな行動をとっているのかを聞いていきたい。昼食を含め「食事のとりかた」を見つめなおす機会が得られるかもしれない。

 後篇では、ビジネスパーソンの昼食のとりかたについて、行動分析の見地から心がけたいことや現実的な問題・悩みへの助言を聞くことにする。

食事中の人の会話、身振り、視線を分析

――「食事における人の行動」を分析されているそうですが、どういった経緯でこの研究は始まったのでしょうか。

徳永弘子氏(以下、敬称略) 私が所属する東京電機大学のインタラクション研究室では、おもに人のコミュニケーションを研究対象としています。

 研究室の師である武川直樹先生(東京電機大学情報環境学部教授)が、「そもそも口は1個しかないのに、その口で人は食事のとき食べることと話すことを両方をこなしている。この行動を分析するのは面白そうだね」と着眼したのがこの研究の始まりでした。それを私が引き継いで、食行動全般の行動を対象に研究しています。

徳永弘子(とくなが ひろこ)氏。東京電機大学情報環境学部インタラクション研究室研究支援研究員・非常勤講師。博士(工学)。大学で家政学を学ぶなどした後、2005年、東京電機大学インタラクション研究室に研究事務職として入室。2006年ごろから研究にも携わり、コミュニケーション行動に関する研究を開始。武川直樹教授のもとで人のコミュニケーション行動の研究を進める。2014年、博士論文「多人数会話の参与者らによる協力的な会話場形成の仕組み」で博士号を取得。現在は、高齢者の親とその家族をICT技術で結び、会話を伴う食事をしたときの効果などを研究している。「電子情報通信学会HCGシンポジウム優秀プレゼンテーション賞」「同学会ヒューマンコミュニケーション賞」「日本官能評価学会2014年度大会優秀研究発表賞」などを受賞。

――実際に、どのように研究をするのですか。

徳永 例えばテーブルに、カレー、スープ、サラダ、ミネラルウォーターなどの食べものを置いて、実験協力者に食事をとってもらい、その場面をビデオカメラで撮影して記録していきます。

 そして、ビデオ録画を見て、それぞれの人が、なにを話しているのか、話し手になっているのか受け手になっているのか、手の動きはどうか、視線はどこを向いているかなどを、時の経過ごとに書き込んでいきます。

 こうして、書き込んだものをエクセルの表で整理して統計的に処理し、行動の傾向を分析します。これが「量的な分析」にあたります。

 被験者の人数は、3人での場合が多いですが、2人のときや1人だけのときの食事行動も分析します。

 また、食事中に重要と思える動作があれば、それも分析対象にして「質的な分析」も行います。このように、量的な分析と質的な分析の二本立てで研究しています。

TVに携帯、無心で食べる・・・孤食では行動が単調に

――実験ではどんなことが分かってきたのでしょうか。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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