2016年の原油価格を大胆予測してみる

金融危機発生で1バレル10ドルの世界に突入、サウジではクーデター?

2015.12.28(月) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45626
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 このように原油に関するパラダイム転換は頻繁に起きている。そのため、古いパラダイムに精通している専門家ほど間違いを犯しやすい傾向にある。

 現在進行中の原油市場では「供給過剰による原油価格の無限下落」が新たなコンセンサスになりつつある。だが、はたしてそうだろうか。

 臨界状態に達すると振り子が大きく反転するように、原油市場で今後「相転移」(水が一瞬にして氷になるような劇的な変化)が起きる可能性はないだろうか。筆者が危惧するのは原油が再び「戦略物資」に先祖返りしてしまうことである。

日本に必要な最悪シナリオの想定

 日本にとっては、原油価格の振れ幅の大きさよりも、サウジアラビアをはじめとする中東産油国の政情不安リスクのほうが大きなインパクトを与えることは論をまたない。

 戦後の日本経済の繁栄を支えてきた中東産原油へのアクセスに万が一支障が生ずれば、アベノミスクによる経済再生は水泡に帰してしまうおそれがある。

 1973年の石油危機をうまく乗り切ったロイヤル・ダッチ・シェル社の成功の秘訣に、将来の不確実性が高まる中で複数のシナリオを立ててこれに対する対策を用意しておく「シナリオプランニング」という手法がある。

 以上で筆者が提示した原油価格の推移予測は複数のシナリオの中で最悪の部類に属するだろう。日本では組織の原理を優先するあまり、最悪のシナリオを語らない傾向が強い。しかし、最悪のシナリオを想定することで国家は危機を回避することができる。

 戦前の日本はサウジアラビアから原油開発への参加を打診されたことがあったが、「シーレーンの安全を確保できない」と海軍が難色を示したため断念した経緯がある。

 米国が「世界の警察官」の役割を放棄し、原油を巡るパラダイムが再び大転換の兆しを見せる今こそ、中東産原油への依存というエネルギー分野での「戦後レジーム」からの脱却を図るべきではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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