2016年の原油価格を大胆予測してみる

金融危機発生で1バレル10ドルの世界に突入、サウジではクーデター?

2015.12.28(月) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45626
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 外貨準備の払底を防ぐためにサウジアラビア政府は通貨リヤルのドルペッグ制を放棄するが、資金の大量流出を招くという逆の結果を招き、国内経済はますます疲弊する。

 サウジアラビアでは2015年1月にサルマン新体制となったが、新体制の下でムハンマド副皇太子(国防大臣、30歳)への軍事・経済面での権限集中が進んでいる。国家の窮乏とサウジ王家の行く末に危機感をもつズデイリ系以外の王族たちは、ムハンマド国防大臣の専横を打倒するため、前アブドラ国王の息子であり国家警護隊(隊員は約10万人で同国国防軍の規模に匹敵)の長であるムトイブ氏を擁してクーデターを決行する。

 王族内では「虎の子」である原油関連施設には攻撃を加えないとのコンセンサスがあるが、王族内の分裂が内戦へと発展するため、市場関係者は未曾有の地政学的リスクの上昇と判断。その結果、原油価格は1バレル80ドル以上に急騰する。

(4)12月~シェールオイルの大増産で再び1バレル40ドル台に下落

 米国では経営破綻したシェール企業の油・ガス田権益を二束三文で買収していたエクソン・モービルやシェブロンなどの大手石油会社が、原油価格の急上昇によりシェールオイルの増産を急ピッチで進める。このため世界の原油価格は徐々に下落し始め、1バレル40ドル台に向かうことになる。

 しかしアジア諸国は輸送上の理由からシェールオイル調達が困難なため、輸入する原油価格には大幅なプレミアムが付与されたままである。

原油は戦略物資から市況商品、金融商品へ、そして戦略物資?

 以上が大胆予測のあらましだ。筆者が原油価格の乱高下を想定しているのは、原油を巡るパラダイムが大きく変化しつつあると感じているからである。

 1973年の石油危機で、原油は第2次大戦中と同様「戦略物資」(戦争の遂行に不可欠な工業用原料)と扱われるようになった。だが、その後の1980年代後半の逆オイルショックで、市場で容易に調達できる「市況商品」として認識されるようになった。

 21世紀に入り2004年以降は高値ラッシュとなったが、「ピークオイル論(世界の原油生産は近くピークを迎える)」に代表されるように原油は「希少性の高い」市況商品となった。

 しかし原油価格の高騰によりこれまで生産が不可能とされていたシェール層での原油生産が可能となったため、世界の原油の可採埋蔵量がローマクラブが「成長の限界」を発表した頃(1972年)の2兆バレルから7.7兆バレルと約4倍に急拡大した(2011年のIEA報告)。

 このため原油に対する希少性は薄れ、世界の原油市場がリーマン・ショック後の金融緩和マネーの受け皿となったこともあって、原油は「金融商品」の要素を強めた。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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