6月10日、参議院本会議で「防衛省設置法」改正案が成立しました。この法案については極端な評価がマスメディアや国会で入り乱れました。曰く、「文官統制の廃止」「文民統制が損なわれる」「自衛隊員と防衛官僚の地位の平等化」等・・・。
(参考)
「『文官統制』を全廃 改正防衛省設置法が成立」(共同通信)
「背広・制服対等を明確化 防衛省設置法改正案成立」(産経ニュース)
「制服組、背広組と対等に 野党『文民統制、危うく』 改正防衛省設置法成立」(朝日新聞)
しかし、本当の問題は、防衛省の意思決定における分権化がより進むことで、政策決定の混乱が起きかねないことなのです。決して、防衛官僚による自衛官の支配が終了するであるとか、自衛官が防衛官僚を支配するというような、短絡的かつ極端な問題ではないのです。
「12条」と「8条」の改正点とは
今回の法改正で、特に注目すべき第1の点は、これまでの防衛省内局(防衛官僚)の優位性を担保してきたとされる「第12条」について大きな変更が行われたことです。
旧来の条文では、「官房長及び局長は、次の事項について防衛大臣を補佐する」とされ、内局の防衛官僚が防衛大臣の第1の補佐と「形式上」されてきました。
ここにおける「次の事項」とは、「自衛隊の方針・計画に対する防衛大臣の指示及び承認」「防衛大臣の自衛隊に対する監督」を意味しています。つまり、防衛省内局(以下、「内局」)」が防衛大臣の第1の補佐、すなわち、時には大臣の代理として文民統制を行使するということです。これが、かつては「文官優位」、近年では「文官統制」と言われる由縁でありました。