相変わらず解消されない原油の供給過剰状態

年内に再び「50ドルまで急落」の声も

2015.07.03(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44194
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「イスラム国」、イラク最大の製油所を一部占拠

OPEC加盟国イラクの北部バイジにある石油精製施設(資料写真)。(c)AFP/Stan HONDA〔AFPBB News

増産で市場シェア確保を目指すOPEC

原油価格が下落を始めてから1年が経った。2014年7月まで1バレル=100ドル前後で推移していた価格は42ドル台まで下落し、2015年3月半ばから反転。5月には約5カ月ぶりに60ドル台に達し、以降2カ月にわたり原油価格は60ドル前後で推移している(7月1日は4月以来の大幅安となり56ドル台となった)。

 しかし原油の供給過剰という構図に変化は見られない。むしろ需給バランスは悪化している。供給の増加が続く一方、最大のエネルギー消費国である中国の需要見通しに陰りが出ているからだ。米エネルギー省が6月に公表したデータによれば、世界の原油の供給過剰量は昨年の第2四半期末から2倍以上に増加し、日量260万バレルに達している。

 石油輸出国機構(OPEC)の6月の原油生産量は前月に比べて30万バレル増の日量3160万バレルとなり、今後数カ月間はこの水準で推移する見通しである。

 OPECが6月16日に発表した年次報告によれば、加盟国全体の昨年の原油輸出量は9933億バレルで、2013年の1兆1120億バレルから減少した。輸出額も2010年以来初めて1兆ドルを下回っている(前年比11%減)。現在の原油価格では、OPEC加盟国のほとんどが財政均衡に十分な原油収入を得ていないはずである。そのため、当面は増産することはあっても減産することはないだろう。

 OPECが市場シェア確保を目指す方針を堅持しているため、供給過剰の状態は過去30年で最も長期にわたって継続しそうである。国際エネルギー機関(IEA)のデータによれば、世界の原油供給は過去5四半期にわたって需要を上回り、既に1997年のアジア通貨危機以来、供給過剰の状態が最も長くなっている。OPECが現在の生産を維持すれば、供給過剰の期間は第3四半期までには1985年以来で最長となる見込みである。核合意が決裂してイランが国際石油市場へ完全復帰しなくても供給過剰が解消しないのである(米エネルギー省は少なくとも2017年まで供給過剰が続くと予想している)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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