全国各地で火山が活発化し、沈黙を続ける活火山・富士山に注目が集まっている。前編に続き、富士山の麓に拠点を構える山梨県富士山科学研究所 火山防災研究部 部長の内山高主幹研究員と、常松佳恵研究員に話を聞いた。
前篇では、富士山は2000年末~2001年にかけて、低周波地震が月に100~200回ほど観測されたが、ここ最近は月に多くても50回程度で、地下水の状況等を踏まえても「平常的な観測状況」と見られていることを伝えた。1707年の「宝永大噴火」から308年間、沈黙を続ける富士山は「いつ噴火してもおかしくない」と言われ続けている。2000年末~2001年には、噴火こそ起こらなかったものの、この時にマグマの動きが活発化したのではないかと見られている。
後篇では、富士山の噴火の予知がなぜ難しいのか、そして、火山観測とシミュレーションの重要性について紹介したい。
特殊な山「富士山」
● 東西に引き裂かれるフィリピン海プレート
富士山の付近には、北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの3つのプレートの収束地点がある(図)。3つのプレートが重なり合う三重点は、地球上でも極めて特殊な地点と言われている。さらに、フィリピン海プレートは、ユーラシアプレート、北米プレートのそれぞれの下に沈み込むことで、東西に裂けたようになっている。そのため、地中深くで発生したマグマが、この裂け目を通ることで、上昇しやすくなると考えられている。