前回(「自衛隊がクーデター?日本の議論は時代遅れだ」)、すでに米国ではクーデター防止や軍隊の暴走が主要なテーマから外れたと述べましたが、では、近年の米国の政軍関係研究ではどのようなことが議論されているのでしょうか。
それは、確立された文民統制をどのように運用していくかということでした。これは1990年代以降の「政軍関係研究のルネサンス」と言われた中で中心となった議論の1つです。この問題意識に関しては多くの議論が存在しますが、ここでは主観的に興味深いものをご紹介させていただきます。
米国における文民統制の考え方
(1)文民を「元請け」、軍人を「下請け」と見なす考え方
第1は、デューク大学教授のピーター・フィーバーの議論です。彼の考えは、分かりやすく言えば、文民を元請、軍人を下請と見なして政軍関係を考えるというものです。
つまり、軍人と政治指導者の間では、基本的な利害は一致していても、部分的には政策的な利害関係が一致しない場合があります。例えば装備品の調達であったり、軍隊の派遣をめぐる決定においてです。その際、軍人は自らの専門知識の優位性等を生かして、政治指導者の政策に抵抗したり、または怠けようとする傾向があると主張したのです。