多くを語らず、動作や表情で心を動かす――。
昨年11月にこの世を去られた名優、高倉健氏。背中で語る寡黙で真っ直ぐなその演技は、日本を代表する数々の名作を生んだ。いくつかのシーンが頭に浮かぶ読者も多いのではないだろうか。
高倉氏の演技は言葉を使わずとも言葉以上のものを心に語りかけてくる。それ故に多くの人々が心動かされた名優として、「男の中の男」と呼ばれている。
若手経営者の目を釘付けにした、ある会長の行動
コミュニケーションと言うと「言葉」に意識が向くことが多い。しかし、人はコミュニケーションを取るる時、言葉のみならず、相手の表情、姿勢、態度、動作、仕草、そして服装や髪型、呼吸、声のトーンなどから総合的に相手のことを理解し、そして判断しようとする。
そのため、コミュニケーションは、文字や音声として言葉を使う場合と、言葉以外の方法を使う場合に分けられる。前者を言語コミュニケーション(verbal communication)、後者を非言語コミュニケーション(non-verbal communication)と呼ぶ。
経営やビジネスで成功するために必須の能力と言われているのがコミュニケーション能力である。その際、言語コミュニケーションのみならず非言語コミュニケーションについても意識を持つことで、より質の高いコミュニケーション能力を身につけることができる。
一流のコミュニケーション能力を持つ人は、言語と非言語の両面でメッセージを発信し相手を動かす能力と、メッセージを受信し相手を見極める能力を有する。
ある大手企業の会長に若手経営者の集まる勉強会の講演を依頼したことがあった。これまで大きな業績を残してきたこともあり、そのたたずまいからは貫禄、オーラを感じる経営者だ。
会長が会場に着くと、会長の方から参加している若手経営者たちに名刺交換を申し出ていった。
会長は名刺を差し出し、相手からの名刺を受け取った後、「ありがとうございます」との言葉とともに、ゆっくり90度頭を下げた。次の人、次の人・・・、名刺を受け取った後、ゆっくり90度頭を下げていった。