MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 『コミュニケーションリーダーシップ』(佐藤玖美著、日本経済新聞出版社刊)という本が出た。

 副題に「考える技術 伝える技術」とあって、PRとかマーケティングコミュニケーションを超えて、最終的に人を動かすにはどうしたらいいかということを、様々な事例を用いて解説したコミュニケーション戦略に関する著書である。

 アメリカ生活の長かった私の場合、「なるほど」と興味深く読ませていただいたが、一般の日本の読者にとってはかなり新鮮に受け止められる方も多いのではないだろうか?

 本の帯に「ドライブ(Drive)、差異化(Differentiate)、エンハンス(Enhance)、リポジション(Reposition)――人を動かす4つの戦略を伝授!」とあり、そのための論理の組み立て方を明らかにする本という触れ込みだ。

 確かに、4つの戦略の頭文字を取ったDDERマトリックスだったり、SWOT分析、さらには戦略的インペラティブという用語も出てきて、なんだか軍隊の秘密コードのように難解に感じられるかもしれない。

 しかし、相手に何かを伝えるだけでなく、その上で分かってもらい、行動に移してもらうためにはこうした論理的に考えた戦略が必要で、著者が若いときに勉強したコミュニケーション先進国のアメリカならではのことだと感心しつつも、そういえば医学の分野でも似たようなことはあったなと思い出した次第である。

 アメリカでは臨床医学のトレーニングにおいて SOAP note ということをよく聞く。これはSubjective、Objective、Assessment、Planという言葉の頭文字であるが、治療計画を立てる上で、まず同僚の医師たちに自分の考えをsystematicに伝える方法である。

 これは外科の特殊な分野(脳外科、形成外科)などよりは、一般内科、小児科などの教育でより重宝されている。

 例えば、ひどい夜泣きに発熱と嘔吐を訴えて小児患者が母親に連れられてくる。医学生あるいはインターンはまずこのSOAPに従ってストリーを組み立てていく。

 Sはこの場合、前述の夜泣き、発熱、嘔吐となる。Oは患者を診察して得られる情報で、発熱の程度、夜泣きの具体的内容(この場合間歇的と判明)、腹痛の部位が特定できないこと、さらには聴診所見となる。