「社会、経済、そして現代的生活のインフラストラクチャーのより一層の統合が引き起こした、国境を越える体系的なリスクに世界はさらされている」

 こう警告を発しているのはオクスフォード大学マーテイン・スクール学部長のイアン・ゴールデイン氏である(「グローバリゼーションの脅威に目を向けよ」東洋経済オンライン)。

 確かに様々な脅威が国境上にあふれ出してきている。統合された金融システムが経済危機を繁殖させ、飛行機の国際便は疫病を拡散させる。相互接続されたコンピュータは、サイバー犯罪者たちにとって格好の活躍の場と化しているし、中東のイスラム国はインターネットを利用して世界中の若者を募集している。

 グローバリゼーションはここ数十年間、世界全体で未曾有の規模の富を作り出した。しかし国民国家という枠組みを超えるこれらのリスクが、今後巨大な悪影響をもたらす可能性がある。 

 各国政府の協力がはかばかしくない状況を尻目に、世界の有権者の間でグローバリゼーションに対する懸念がかつてなく高まり、保護主義など市場への一層の国家管理を提唱する政党(極右及び極左)の支持が急拡大している。

 このような状況に対しゴールテイン氏は「短絡的な政治的ご都合主義を克服しなくてはならない。さもなければ、全世界が後悔する日が訪れるであろう」としている。グローバリゼーションが与える政治への負のインパクトに対処するのは万国共通の課題である。