世界はスマホを中心に回っている

 スマホの販売台数は、2013年に10億台、今年2014年には12億台を超えるという。2007年の「iPhone」発売以来、スマホの累計販売台数は、おそらく30億台程度になるのではないか。今やスマホは、世界70億人に必要な生活と仕事のツールになりつつある。

 今後、普及が予想されるウエアラブル端末やモノのインターネット(Internet of Things : IoT)においても、スマホはそれらのハブとなるため、その重要性はより大きくなる。スマホは、「常時ON」「常時センシング」「常時接続」に向けて機能が進化しし続けるだろう。

 このスマホの最も重要な部品は、すべての機能の中心となる半導体集積回路、いわゆる「アプリケーションプロセッサ」(AP)である。したがって、APを制するものがスマホを制すると言っても過言ではない。

 本稿では、このAPを巡って、どのようなバトルが繰り広げられ、どのような主役の交代が起きてきたか、また起きそうかについて論じる。

スティーブ・ジョブズの慧眼

 「スマホの付加価値は、APが握っている」。

 このことにいち早く気づいたジョブズは、iPhoneに強力な付加価値をつけるために、自前のAPを持つしかないとの結論に至った。しかし、当初アップルにはプロセッサを設計する能力はなかった。

 そこで、2008年4月、アップルは米P.A.Semiを2億7800万ドルで買収した。P.A.Semiは2003年に創業した半導体設計専門のファブレスで、その中心人物は創業者の1人、ダン・ドバーパルという設計者である(図1)。

図1 アップルはiPhoneにどのように付加価値を付けたか