「逆オイルショック」が再来?
シェールオイルがもたらすエネルギー情勢の激変

2014.09.12(金) 藤 和彦
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 急成長した先物市場だが、相変わらずボラティリティは高く、「ひょっとして原油価格が下がるのでは」という憶測が広まるだけで、急激な価格低下が発生する。

 リーマン・ショック後の暴落が示すように、石油価格はマクロな金融情勢にも大きく左右される。ウクライナを巡る欧米とロシアの対立の先鋭化がドイツ経済に予想以上の悪影響を及ぼしており、さらなる欧州経済の悪化が避けられない状況になりつつある。また、中国不動産のバブル終焉が現実のものになり始め、米国の利上げが市場予想よりも前倒しされ、資産バブルが再び破裂するのではとの懸念が強まるなど、世界全体に石油価格の押し下げ効果をもたらす「地雷」が埋まっていると言っても過言ではない(9月18日に実施されるスコットランド独立の是非を問う住民投票で独立が決まった場合、英国が通貨危機に見舞われるリスクがあるとの懸念が急浮上している)。

 2014年4月1日付「ウォールストリート・ジャーナル」は、シェールオイルの増産などを理由に「原油価格は今後5年間で1バレル100ドルから75ドルに下落する可能性がある」との記事を掲載した。

 攪乱要因であるシェールオイルの生産コストの上限が約70ドルなので「価格が下落しても70ドル近辺で下げ止まる」との観測だが、市場価格がトータルの生産コストを下回っても、操業変動費を回収しようと操業を続けようとすれば、供給過剰が解消されず、生産コストによる歯止めがかからなくなる。

 サウジアラビアの生産コストは3ドルであるため、原油価格が暴落してもこれまで安泰だとされてきたが、「サウジアラビアの財政は石油価格が100ドル/バレルでないと耐えられないのではないか」と石井氏は警戒感を露わにする。

 確かに石油の生産コストは低いが、サウジアラビアは巨額の石油レント(余剰利潤)を国民に大盤振る舞いすることで、地球最後の王政の1つと言われる現在の政治体制を保持している。近年の「人口爆発(80年には980万人だった人口が2012年には2920万人に増加)」により財政需要がますます拡大しているが、石油等鉱物資源の輸出が9割を占めるというモノカルチャー経済は変わっていない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

エネルギー戦略

20世紀の社会を築き、支えてきた石油。しかし世界的な環境意識の高まりの中で、石油依存社会の限界が明らかになりつつある。石油はいまどうなっているのか。石油社会の次を築き、新世紀を切り開くイノベーションは何か。その最先端の姿をリポートする。

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