経営力がまぶしい日本の市町村50選(27)

 四万十市は高知県の西南部に位置する、人口3万4900人(2014年4月推定)の市である。都市機能が発達した市街地と農山村から成る中村地域(旧中村市)と、森や川の恵みが豊かな西土佐地域(旧西土佐村)が2005年4月に合併して成立した。

豊かな自然と室町以来の伝統を持つ町が直面した危機

岩間沈下橋付近の四万十川(ウィキペディアより)

 周りは豊かな森林に囲まれ、南東は黒潮おどる太平洋に面する四万十市。市域には日本最後の清流と言われ、全国的にも有名な「四万十川」が貫流しており、まさに山紫水明の自然環境に恵まれた町である。

 2009年には四万十川流域の景観が、国の「重要文化的景観」として選定された。四万十市では川の恵みそのものが生活に直結し、まさに人々が生活や生業を通じて、自然と関わり合いながらつくり出してきた景観地であることに大きな価値を見いだせる。

 さらには今から約500年前、応仁の乱を避けた前関白一条教房公がこの地に館を構え、京都に模したまちづくりを行ったとされる。

 これが土佐の小京都のゆえんとなり、今でも碁盤目状の町並みや「祇園神社」「東山」「鴨川」の地名や大文字山の送り火など伝統行事に当時の名残を留めるなど、自然と文化を兼ね備えた町と言える。

 そんな四万十市ではあるが、中村市の時代には市民の給与所得が減少し続け、税収ベースでは毎年約1億円が減少、一方で生活保護費は年に約6000万円ほど増加していた時期があった。

 夕張市の二の舞いになる危機感を感じた当時の澤田(五十六)市長は、2005年度から2008年度にかけて大胆な行財政改革を推し進め、投資的経費や職員給与の抑制、人員整理、ゴミ収集の民間委託などを行った。

 その結果、4年間で合計15.5億円の赤字削減に成功。高知県下11市のうち人口30万人を誇る県都高知市を除けば、10市中で最大の予算規模となり、新しい投資も含めた予算編成が可能になった。そして、いわゆる自治体の貯金である積立金を取り崩さずに市庁舎の改築をやりとげた。

 また、コスト抑制だけでなく新事業の創造にも積極的である。例えば、四万十市は市域面積の8割が森林で、うち65%が市有林であり林業の振興は必須課題だが、新たな林業モデルの開拓を推進している。

 最小限の土を掘り起こして作業道を造り、その土で路側を固める一方、作業道をある程度上ると窪みを持った踊り場を造る。そうすることで雨水は作業道に沿って縦横に流れるため山の木々を潤すし、作業道も雨水の流れで傷まずいつまでも使用できる。

 その道路沿いの木を伐って収入間伐するというモデルである。年間20万m3供給できる森林を持つ市としては、その間伐材をペレットにして燃料として使う木質系バイオマス事業の展開も想定され、現在はバイオマス利用施設は5つほど存在する。