2013年9月 ニューイングランド医学誌に「大腸内視鏡検診を受ければ大腸がんの死亡率が68%低下する」という論文が掲載されました。特に頻度の多い直腸がんやS状結腸がんに限れば、実に82%もの死亡率の低下が認められると報告されています。
世界最高峰の雑誌にこのような論文が掲載されたことで、大腸内視鏡検査が大腸がん予防に果たす効果に対する評価は不動のものとなりました。
日本人全体で年間約4万人の方が大腸がんで命を落としています。この論文の数値を当てはめると、大腸内視鏡検診の導入により大腸がん死亡者を3分の1程度にまで減らすことができるのです。
現在、日本の学会レベルでは、10年に1回(近親者に大腸がんがいるなど大腸がんのリスクが高い方は5年に1回)、全国民に大腸内視鏡検査を施行することを目指しています。
これは、数万名の人命が救われるほぼ確実な方策です。何が何でも実現すべき目標だと私は考えています。
便潜血検査がもたらす弊害とは
現在の日本の大腸がん検診は、「便潜血検査」(便に血液が混じっていないかどうかを調べる検査)で行われています。
ここで問題となるのは、便潜血検査は「感度」(大腸がんであることを正しく診断する確率)も「特異度」(がんでないことを正しく診断する精度)もそれほど高くない検査だという事実です。
どういうことかというと、大腸進行がんが存在しても、1割の方は検査が陰性となってしまうのです。また、大腸早期がんに至っては半数の方が便潜血「陰性」と診断されます。大腸がんの感度としては進行がんで9割になるものの、早期がんでは5割にしかなりません。
ですから、「完全な手遅れにならないうちに(なんとか手術可能なうちに)進行大腸がんを見つけたい」と思って便潜血を受けているのであればよいのかもしれません。