なぜかは分からないが、日本における再生可能エネルギーの議論から、すっぽり抜け落ちているものがある。それは、木材(木質原料)を利用したガス化によるバイオ燃料の開発である。
設備的に大がかりになり、投資リスクもそれなりにあるが、グリーン(カーボンニュートラル)なディーゼルや航空燃料も生産可能になる。言い換えれば、木材を使って重油ができるのだ。
ヨーロッパでは実証プラントが稼働しているし、一部は本格生産に移行しつつある。米国でもエネルギー省を中心に国家戦略として動きつつある。
このままでは、欧米を中心とする流れに取り残される危惧がある。世界的なエネルギーの状況をいま一度見直しながら、日本におけるバイオエネルギー、ひいては国内材の戦略的利用を論じてみる。
バイオエネルギーと言えば聞こえはよいが、その中身は多岐にわたる。例えば、ヨーロッパでは単に木材を燃やすか、燃やしやすいようにペレットにしたものもバイオエネルギーに含まれ、多額の補助金が与えられるらしい(英エコノミスト誌2013年4月6日号)。
この補助金目的のバイオエネルギーはカーボンニュートラルという名の下に、ヨーロッパの再生可能エネルギーの約50%を占めるそうだ。昔の薪を燃やすのと何ら変わらない。
何かしっくりこないが、しかし、木材をそれだけ伐採できる能力もあることを物語ってもいる。
わが日本では、木材を使おうにも伐採するだけのインフラもなく人員もいないであろう。国土に占める森林面積が68%にも及び、先進国ではフィンランド、スウェーデンに次ぐにもかかわらずである。
フィンランドでは木材が再生可能エネルギーの80%を占めるという(前出のエコノミスト誌による)。
バイオエタノールとバイオ燃料の違い
バイオエネルギーと言えば、トウモロコシを原料としたエタノールを思い浮かべる方も多いであろう。木質原料(木材・草など)を使う同様の方法もある。
しかし、エタノールではバイオエネルギーの主力とはなり得ない。第1に、原料が食料と競合することが多い。第2には、エタノールはガソリンの代替にしかなり得ないのである。