内憂外患。今の日本の自動車業界が置かれた状況を端的に表す言葉だ。

中国工場でスト相次ぐ、ホンダ3件目 台湾系工場では暴動で50人負傷

自動車業界の「外患」。中国の部品工場などで賃上げをめぐるストが相次いでいる〔AFPBB News

 まずは「外患」から。JBpressサイト内でもたびたび取り上げられているが、中国の日系部品メーカーの生産拠点で、賃上げ交渉のもつれからストライキが相次いでいる。その影響で、トヨタ自動車やホンダの組立工場が稼働停止に追い込まれるなど事態は深刻化している。労働者の中心が教育を受けたことのない農村出身者から、ある程度の学歴を持つ層へと変化、労働問題に強い意識を持つようになったことが賃上げ交渉のヒートアップに繋がっている。

 2000年代半ばに電気業界がグローバルな製品供給拠点をベトナムなどに移転したように、自動車産業も中国の「安い労働力」をあてにするのは限界に近付いている。

 中国での新車販売は2009年は1300万台強だったが、2015~2020年には2500万台へと倍増する見込み。巨大マーケット中国でチャンスを逃さないためにも、ビジネススタイルの大転換を迫られている。

間近に迫ったエコカー補助金の終了

 そして「内憂」は、9月末での「エコカー補助金」の打ち切りだ。その後の新車販売がどうなるかは、ある意味、中国問題以上に差し迫った問題と言える。

 日本の自動車業界にとって、中期的な事業テーマは新興国ビジネスの強化だ。とはいえ、ホームグラウンドである日本の国内販売が重要であることには変わりない。その日本で10月以降、「リーマン・ショック」に匹敵するような急減速の悪夢を起こさないためどうするのか――。

 各社は反動減の被害を最小限に食い止めるべく、知恵を絞っている。しかし、決め手となる解決策は見つかっていない。

 2008年秋の金融危機以降、世界的に落ち込んだ新車販売の回復を支えたのは各国政府が実施した購入補助金制度などのインセンティブ施策だ。そのことは日本に先駆けてインセンティブを打ち切った欧州各国の販売反動減に如実に表れている。