体のためには強烈なにおいのニンニクを

孤高の食材「ニンニク」の真相(後篇)

2013.03.22(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

血栓の成長を遅らせる「MATS」

 関氏たちのチームが解明を進めたテーマもある。血管の詰まりを防ぐ血小板凝集抑制作用はその1つだ。

 血管の詰まりは、心筋梗塞や脳梗塞の症状で現れる。それは、次のようなプロセスで起きる。まず、高血圧や糖尿病がもとで、血管の動脈の壁が弾力を失い脆くなる動脈硬化が起きる。動脈硬化が進むと、血管の内膜が厚くなり異常な“こぶ”ができる。この“こぶ”が破綻すると、血液中の成分である血小板が、破れた部分に集まり“かさぶた”のような血栓を作る。血管内にできる“かさぶた”は都合の悪いことに血管を詰まらせてしまうのだ。

 この一連の症状を抑える効果が、ニンニクの成分に含まれている。関氏は「血栓の形成速度を、ニンニク中の成分が遅らせることが分かってきたのです」と説明する。

 関氏たちが効果を見出したのは、「MATS(メチルアリルトリスルフィド)」というにおい成分などだ。MATSは、“かさぶた”ができるのを強力に促すトロンボキサンA2という物質を作らせないように作用する。血小板の凝集を抑える薬として欧米で一般的に使われているアスピリンの効果と同じだ。

 血小板の凝集を遅らせる効果は、ニンニクに含まれる様々な成分で見出されているが、「MATSがいちばん効くということが、様々なニンニクの成分を比較するわれわれの研究で分かりました」と関氏は話す。

 では、どのくらいの量のニンニクを食べると、効果が現れるのか。

 「まだきちんとした実験データがないので答えにくいのですが、1週間に2~3個の鱗片を食べておけばよいのではという見積もりぐらいは出ています」

がん細胞の増殖を抑制する「DATS」

 ニンニク成分の効果は、まだ他にもある。がんを抑える効果にも注目が集まっている。

 「アメリカで、がんを予防する可能性のある食品を洗い出して一覧にする『デザイナーフーズプログラム』というプログラムが1990年代に行われました。その一覧図のピラミッドの頂点にあるのがニンニクなのです」

 この驚きの発表を受け、関氏たちはニンニク成分のがん抑制作用の研究も進めてきた。そして、ニンニクのにおい成分の1つである「DATS(ジアリルトリスルフィド)」というにおい成分に高いがん抑制効果があることを発見した。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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