固い皮の中は謎だらけ、
「メロンパン」の形はどこからやって来たのか

2013.03.08(Fri) 澁川 祐子
筆者プロフィール&コラム概要

 子どもの頃、メロンパンにはメロン果汁が入っているとばかり思っていた。「それにしてはメロンの味がしないよなあ」といぶかしく思いながらも、「でもメロンパンというからにはきっとメロン果汁が入っているんだろう」と勝手に決めつけていた。

 メロンパンにはメロン果汁が入っていない、という驚きの事実を知ったのはいつだったか。はっきりとは思い出せないが、けっこういい歳になっていたと思う。たしか「メロン果汁入り」とわざわざ謳っているメロンパンを目にして、「ってことは普通のメロンパンには果汁が入っていないのか」とやっと気づいたのだ。

 気づくのが遅かったのは、自分があまりメロンを好きではなかったからだ。あの濃厚な甘さが昔から苦手で、メロンを使ったお菓子はなるべく避けてきた。それだけにメロン果汁が入っているに違いないと思い込んできたメロンパンも、進んで味わおうとはしてこなかったのだ。

メロンパンの形は1つではない

 なんだ、形が似てるからメロンパンなんだ。そう思ってこれまで深く考えてこなかったが、いざメロンパンについて調べてみると、単純に「形が似ているから」とは断言できないような気がしてきた。なぜなら、メロンパンの形は1つではないからだ。

紡錘形メロンパン(上)と丸形メロンパン(下)。日本で誕生した菓子パンの中でも定番の1つとなっている。

 メロンパンというと、多くの人が丸形で表面のビスケット生地に格子状の筋がついているものを思い浮かべるだろう。私もそう思っていた。だが、関西より西、特に広島や神戸では、ラグビーボールを縦に割ったような紡錘形で数本の筋が入ったものを指すらしい。しかも、中には白あんやカスタードクリームが入っているという。さらにややこしいことに、あの丸形をした定番のメロンパンもあって、それは日の出にちなんで「サンライズ」と呼ばれているというのだ。

 突然だが、私の両親は広島出身東京在住者である。そこで、試しに「ラグビーボールみたいなメロンパンって、広島で食べたことある?」と母に聞いてみた。すると、「ああ、あのチキンライスの型を伏せたような形でしょ?」と即答だった。やはり広島では、紡錘形がスタンダードなのか。

 そこで「じゃあ、中に白あんは入ってた?」と重ねて質問してみると、「うーん、どうだったかしらねえ」としばらく考え込んだあと、突然記憶の扉が開いたようで「そうそう、入ってた! こっちに来て、あんこが入ってないんだって思った記憶がある!」との答えが返ってきた。

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1974年、神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして食や工芸・デザインを中心に、読むこと、食べること、暮らすことをテーマとしたインタビューやルポ、書評を執筆。『森正洋の言葉。デザインの言葉。』(ナガオカケンメイ監修、美術出版社)、『最高に美しいうつわ』(SML監修、エクスナレッジ)の取材構成ほか、近著に当連載をまとめた『ニッポン定番メニュー事始め』(彩流社)がある。


食の源流探訪

日本人が日常茶飯としている定番食。あまたある食べものの中で、
なぜそれが定番になり得たのか。どのように日本化されていったのか。
「新・日本食」の源流からの流れを、歴史をひもときながら考察する。