安倍晋三首相の主導するアベノミクス。日銀総裁に“金融緩和推進論者”を据えることが(ほぼ)決まり、円安→株高のシナリオがさらに勢いを増しそうな気配が漂っている。

 アベノミクスは果たして日本を救うことができるのか。円安が本当に日本企業と経済全般を再生させるのか。私は冷ややかな目線で見つめている。円安により、主要な輸出型企業の業績が改善するのは明らかだが、その先に明確な企業戦略が見えてこないのだ。

FTの強烈な見出し

 改めてアベノミクスの中身をチェックしてみよう。日銀にさらなる金融緩和と物価上昇目標を設定させ、円高を是正し、円安局面を作る。裾野の広い自動車や電機など輸出型産業を再生させ、これを日本経済全体の回復に寄与させよう、というのがおおまかな内容だ。

 安倍政権が始動する前段階から、市場は敏感に反応し、外為市場で円が急落し、株式市況も上伸した。

 日本株の凄まじい回復力を見た海外機関投資家が買い増しを続けたほか、今まで空売りを続けていた海外投機筋の買い戻しが加速した結果、日経平均株価は2007年のリーマン・ショック以前の水準をうかがう展開となっている。

 2月26日付の「日本経済新聞」によれば、現在の為替水準が続いた場合、製造業主要30社の営業利益は来期で計2兆円増える、という。

 株価は先々の企業の姿を映すという格言に照らせば、アベノミクスは初期段階から成功したように映る。だが、通信社の記者時代からこの国の市況と企業を見てきた私は、今回の市況好転と企業業績の改善期待には強い違和感がある。