拙論「マスコミが伝えない中国の対日攻撃ミサイル」(2012年12月25日)で指摘したように、現時点においても中国や北朝鮮の各種長射程ミサイル(弾道ミサイル、長距離巡航ミサイル)は日本各地の戦略目標を破壊することが可能である。

 このような軍事的優勢を外交的恫喝として用いさせないためにも、一刻も早く何らかの抑止力を保持しなければ対等な外交交渉のテーブルにすら着けないことになる。

日米同盟は万能な抑止力ではない

 日米同盟が存在する以上、中国もアメリカの軍事介入を恐れざるを得ず、対日長射程ミサイル攻撃など絶対に実施しない、と日米同盟を“万能な抑止力”と考えるのはあまりに身勝手な考え方にすぎる。

 対日ミサイル攻撃の可能性をちらつかせての恫喝外交に日本が直面している段階では、日米安保条約に基づくアメリカによる本格的軍事支援はなされない。アメリカの軍事力にそこまで期待するのならば、同盟関係でなく服属関係に変更してアメリカの属領になることを意味する。中国にせよ北朝鮮にせよ、強力な長射程ミサイルによる対日攻撃能力を恫喝的外交に用いさせないために、独立国としての日本は独自の抑止力を保持する必要がある。

受動的な抑止力構築は非現実的

 現在自衛隊が運用している弾道ミサイル防衛システム(イージスBMD・PAC-3)は外敵が発射した弾道ミサイルが日本に向かって飛翔してくるのを待ち受けて迎撃する“受動的”弾道ミサイル防衛システム(BMD)である。

 BMDと違い長距離巡航ミサイルに対する専用の迎撃システム(CMD)の開発はいまだにヨチヨチ歩きの段階であり、現状では各種防空システム(早期警戒機、戦闘機、駆逐艦など)を総動員して日本に向かってくる長距離巡航ミサイルを探知・追尾・迎撃することになる。したがって、これもまた“受動的”長距離巡航ミサイル防衛態勢ということができる。

 これらの受動的な防衛能力を飛躍的に強化して、日本に飛来する長射程ミサイルをことごとく発見し撃墜できるようにすれば、相当強力な抑止力となり得る。