12月12日に実施された「銀河3号」の打ち上げに伴い、何らかの破片が降ってくるかもしれないということで、日本のマスコミの多くは「弾道ミサイル発射」と大騒ぎをしていた。

 しかしながら、銀河3号の破片落下の可能性程度で長射程ミサイルの脅威を騒ぎ立てるのならば、“銀河3号の破片”とは比べ物にならないほどはるかに深刻な弾道ミサイルの脅威を国民に知らしめ、その脅威を取り除く対策を急ぐよう政府・国防当局に対する世論を盛り上げるべきである。にもかかわらず、真の脅威には目をつむり、瑣末な事象で脅威をあおる姿勢は、イエロージャーナリズムとの誹りを免れないと言えよう。

日本には直接的な脅威ではない「銀河3号」

 銀河3号そのものはミサイルではなく人工衛星を地球周回軌道に押し出すローンチビークルであるが、銀河3号の技術を軍事的に使用すると大陸間弾道ミサイル(ICBM)へと発展させることができる。

 「テポドン2号」弾道ミサイルの改良型と見られている銀河3号は、1万キロメートル以上の射程距離を確保したものと韓国軍当局ならびに韓国政府は判断している。したがって、3段ロケットの銀河3号に攻撃用弾頭を搭載すれば、アメリカ西海岸を射程圏に収めるICBMが誕生することになる。そして推力をさらに強化できれば、アメリカ全土を攻撃可能な射程距離1万3000キロメートルを達成することができる。北朝鮮のロケット技術の進捗状況から判断すると、2~3年以内には射程距離をあと3000キロメートル延長することは可能であろうと見なされている。

 ただし、弾頭を取り付ければICBMが誕生するとはいっても、弾道ミサイル弾頭の技術開発は極めて困難である。効果的に敵を攻撃するための弾道ミサイル弾頭を開発するには、少なくとも数回の実射テストが必要である。この種の試射の場合、人工衛星の打ち上げといった口実は全く通用しない。ミサイル技術開発自体の困難さに加えて、アメリカ・韓国・日本をはじめとする国際社会からのより強力な経済制裁を幾度も凌ぎながらミサイル弾頭開発実験を繰り返さなければならないことになる。したがって、米軍などの弾道ミサイル技術専門家たちは、北朝鮮がアメリカ攻撃用ICBMの開発に成功する道は遠いと考えている。

 いずれにせよ、銀河3号の開発そのものが直接軍事的脅威となるのはアメリカであり日本ではない。

 ただし、銀河3号発射成功に用いられた技術から、日本にとって直接的脅威になるであろう技術も存在する。例えば、韓国国家情報院によると、銀河3号の3段目ロケットには高度なロケット技術である誘導操縦技術が使用されていた。したがって、北朝鮮の弾道ミサイル発射技術は相当進展していると考えなければならない。