自民党が圧勝し、自公の政権復帰が決まった。だが今回の選挙戦で本当に勝った政党はあったのだろうか。

 前回のコラムで私は「悩ましい選挙」だと書いた。政党の数は多いが、投票したいと思う政党がなかったからだ。だがそれでも、もちろん投票はした。だが少なくない有権者は投票そのものを拒否した。

 これで選挙は成立するのかと言いたくなるような低い投票率がそれを物語っている。この投票率は、すべての政党への不信任と同じ意味を持っている。

 いま日本は、様々な難問に直面している。3.11大震災と原発事故と遅れる復旧・復興、長く続くデフレ経済、若年層を中心とした高い失業率と不安定雇用、先行きが見えない年金など社会保障制度、尖閣諸島の国有化と中国との関係悪化、北朝鮮の大陸間弾道弾ミサイルの発射実験、TPP問題・・・。

 どれもが国民の生活や日本の進路にとって、ゆるがせにできない問題である。それでも有権者は投票に行かなかった。政治に絶望しているからだ。民主党政権の失敗にはこりごりだが、だが3年余前までの自民党政治の復活で日本が良くなるとは思っていないからだ。すべての政党が、この低投票率を深刻に受け止めるべきである。

史上最低の選挙だった

 今度の選挙で一体何が争点になったのだろうか。それぞれの党がそれぞれに訴えを行ってきたが、いずれかの問題が大争点になったというものはない。脱原発や卒原発も自民党を除けば大して変わりのない主張が、他のすべての政党によって繰り広げられただけだ。「卒原発」などというのは、脱原発の言葉遊びに過ぎない。これでは争点になるわけがない。

 上記の重要課題を見ても、そもそも大きな対決点はなかった。せいぜい経済政策で自民党の金融緩和論と公共事業増大路線ぐらいのものだ。社会保障制度も違いはあるのだが、何十年も先の話であって、何がどう違うのか、国民には分からない。

 要するに、それぞれの党が他党を批判し、「わが党ならできる」と訴えただけであった。政党の体をなしていない党も含めて、12もの政党が乱立したが、争点なき総選挙だったのである。これでは選挙に行きたくなくなるもの当然ではないか。

最大のテーマは民主党の進退

 では何が争われたのか。答えは簡単だ。民主党には政権をまかせられない、という国民の意思を示すことであった。民主党の中には、野田首相が解散表明をした際、中山義活氏(東京2区選出、鳩山首相時代の首相補佐官)のように、「解散するならば総理自らがここは誰かに代わって、皆が納得する人がやっぱり『総裁』としてやるべきだと私は思いますね」いう輩もいた。中山氏が想定しているのは、代表戦出馬を促した細野豪志現政調会長である。ちなみに党の代表を「総裁」というのは自民党であり、民主党では「代表」という。