毎年年末は、韓国の大企業に勤務する管理職にとって最も期待と不安が交錯する時期だ。ほとんどの財閥、金融機関が年1回の役員人事を発表するからだ。
景気減速や経済の先行きがさらに不透明になる中で、大企業は「実力主義」と「若返り」をさらに進め、難局を突破する姿勢をさらに強めている。韓国のエリートサラリーマンの緊張感とストレスは高まるばかりだ。
サムスンの目玉人事はオーナー会長の長男の昇格
韓国の経済界でも最も注目を集めるのがサムスングループの人事だ。韓国メディアが最も大きく報じたのが、李健熙(イ・ゴンヒ)会長(70)の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)氏(44)の副会長昇格だった。
韓国の財閥では、会長はオーナー1人であることが多い。グループごとに複数いることが多い副会長が実務を取り仕切るグループ最高首脳だ。
サムスングループでも、サムスン電子CEO(最高経営責任者)出身である崔志成(チェ・チソン)氏(61)や後任のサムスン電子CEOである権五鉉(クォン・オヒョン)氏(60)などが副会長だ。
李在鎔氏は2010年にサムスン電子社長に就任していたが、2012年末の人事で副会長に昇格した。
韓国メディアでは、大統領選挙の最大の争点の1つが「経済民主化」で、特に野党候補が「財閥の支配構造」に切り込むことを主張していることから、「世間の注目を集めるのを避けるために李在鎔氏の昇格は見送りになる」との見方が強かった。
だから、昇格人事は意外と受け止める向きが強い。だが、サムスングループはこうした「外野の声」とは関係なく、「実績主義」で人事を決めたようだ。
実子の間でも実績主義を徹底か?
サムスン電子は、スマートフォンの大ヒットで2012年も絶好調の業績が続いている。
COO(最高執行責任者)だった李在鎔氏の昇格は、「信賞必罰」が人事の基本ルールだと繰り返し公言している李健熙会長をも納得させるに十分だったはずだ。
一方で、会長の2人の娘の昇格が見送られたのも、2人が経営に関わるグループ企業がサムスン電子ほどの実績を上げられなかったためだろう。だから今回の人事には「長男と長女、次女間に意図的な差をつけた」というのは、うがった見方だと思われる。