毎年11月中旬に、アメリカ連邦議会の政策諮問委員会である米中経済安全保障調査委員会は連邦議会に対して報告書を提出する。

 この調査委員会は上下両院超党派の代表によって指名された12名の委員から構成されている。それぞれの委員は、専門職の政策ならびに事務スタッフの補助を得て、米中間の経済問題全般ならびに米国に影響を与える中国が関与する安全保障問題に関する調査を実施し、連邦議会に報告する。政策スタッフは、中国あるいは台湾の貿易、経済、武器拡散、外交政策に関する専門家集団である。

 先日(11月14日)、「米中経済安全保障調査委員会2012年版年次リポート」がアメリカ連邦議会に提出された。

 このリポートの中には、アメリカの安全保障に対する中国の影響に関して2012年にはどのような動きがあったのかを概観する節(第2章・第1節)がある。その節の中で、最もスペースを割かれているのが「東シナ海における防衛問題の動向」と題する項目であり、主として尖閣諸島を巡る領有権論争に関する記述がなされている。

 その概要は、以下のような具合である。

「アメリカ政府の立場は明瞭」と記述

 「東シナ海に浮かぶ3つの小島を日本政府が20億5000万円で日本人の所有者より購入した。日本では尖閣、中国では釣魚島、台湾では釣魚台と呼ばれる資源(筆者注:海底資源)が豊富な諸島は日本によって支配(管理、administer)されていたものの、1970年代より中国や台湾によっても領有権が主張され始めた。日本政府による国有化が発端となり、これらの島を含む尖閣諸島の領有権を巡る日本と中国(それに台湾)の間の論争は急速に激しさを増した」

 「中国政府は国連やその他外交の場で、日本政府による国有化は茶番劇でありなんら歴史的背景に影響するものではない旨を繰り返し主張している。また、中国国内では反日暴動や日本製品ボイコット運動なども含めて日本ビジネスに対する攻撃が行われた。さらに、中国海洋監視船による尖閣諸島周辺海域での“領海防衛行動”も繰り返し実施されている」

 「台湾の馬政権も尖閣諸島の領有権は台湾にある旨を強調するとともに、尖閣諸島周辺海域で操業する台湾漁民保護のために沿岸警備隊巡視船を派遣した。日本政府の尖閣諸島国有化に先立つ8月、馬政権は『東シナ海平和構想』を打ち出した」

 「中国の非難や反日行動に対して野田政権は、石原都知事が購入するだけでなく扇動的行動に出るのを防止するために日本政府による購入を急いだのだ、と説明している。しかしながら中国側はそのような説明を受けつけず、野田政権の欺瞞にはだまされないと主張している」