韓国の李明博大統領が天皇を侮辱する発言をしたというニュースは、日本人を激怒させました。日本の怒りの大きさに、大統領も狼狽し、釈明をせざるを得なくなるところまで追い詰められ、日韓関係は今なおぎくしゃくしています。

 いわゆる右派の人に怒られるかもしれませんが、実は私もあれほど日本政府が怒り出すとは思いませんでした。もちろん怒るのは当然ですが、こういうときに弱腰になるのが日本の外交だと思っていたので、驚いたというのが本音です。

「神様」を利用してローマ人を統治したヌマ・ポンピリウス

 <宗教を大切にすることが、国家の大をなす原因であると同様に、宗教をないがしろにすることが国家滅亡のもとになる。>

 (『ディスコルシ 「ローマ史」論』、ニッコロ・マキァヴェッリ著、永井三明訳、ちくま学芸文庫)

 ローマの建国者とされる王政ローマ初代の王、ロムルスのいた時代のローマは、乱暴狼藉の輩が集まってできた国でした。

 当初集まったのは男ばかりで女がいなかったので、近隣の国の人を多数招待し、ついてきた女性を大量に誘拐し自分たちの妻としました。これに怒った近隣の国は、女性たちを取り返そうとローマを攻めました。

 しかし誘拐された女たちが戦場に割って入り、こう言い放ちます。

 「もう自分は子供もできている。父や夫が敵味方に分かれて殺し合うことを私たちは望まない。どうしてもやるというなら戦争の原因である私たちを殺してからやりなさい!」

 女たちの迫力に両軍は静まりかえります。そして軍隊は引き下がり、和解したという状況でした。

 そんなありさまでしたから、建国者ロムルスの死後、誰が次の王となるのかもめました。特に優れた候補者もいなかったため、元老院は王を他国からスカウトしようと考えます。そして、敬虔で正義感の強い人として知られていたサビナのヌマ・ポンピリウスを招聘し、2代目の王にします。