西洋絵画にはユダヤの秘密が隠されている(写真:Reporters via ZUMA Press/共同通信イメージズ)西洋絵画にはユダヤの秘密が隠されている(写真:Reporters via ZUMA Press/共同通信イメージズ)

 絵画と宗教は切っても切れない関係がある。どのような教えを中世宗教画が伝えてきたのか読み取ると、ユダヤと中東問題、イスラム教とユダヤ教の関係、その両方に深くかかわるキリスト教など、今につながるものが浮き彫りになる。レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』やミレーの『落穂拾い』など、有名絵画に隠された秘密とは。

※石角完爾『西洋絵画に隠されたユダヤの秘密』(笠間書院)から抜粋、一部編集した。

【1回目から読む】神とすら戦うユダヤ人が富のために生み出したものとは?絵画から学べなかった日本人と富を得たユダヤ人の差
【2回目から読む】「神は罪なき善人を殺すのか?」神をも言いくるめるユダヤ式交渉術とは
【3回目から読む】偶像崇拝禁止は政治権力構造への戒め、抽象的思考を徹底追求するユダヤ教

(石角 完爾:国際弁護士)

キリスト教徒とユダヤ教徒で異なる見立て

 レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)の『最後の晩餐(The Last Supper)』は、世界の超有名絵画の頂点に位置するものの一つである。1495年から98年にかけて描かれた原画は、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会(Chiesa di Santa Maria delle Grazie)というイタリア・ミラノの教会に収蔵されている。

 その教会自体もユネスコの世界遺産に指定されているというものだ。

◎レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐(The Last Supper)』(写真:Leonardo da Vinci, Public domain, via Wikimedia Commons)レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐(The Last Supper)』(写真:Leonardo da Vinci, Public domain, via Wikimedia Commons)

 そして、それを模写・修復した絵が、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに収蔵されている絵画である。ロンドンの方の『最後の晩餐』の絵は、キリストの素足や、ユダが塩の壺を倒して、塩がテーブルに溢れているところまで明確に描かれている。ワインが入ったワイングラスが各人の前に置かれているのも見える。

 ロンドンの方の絵の作者はダ・ヴィンチよりも若いジャンピエトリーノ(Giampietrino)というイタリアの画家で、1522年に『最後の晩餐』を模写したといわれている。ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに収蔵されているこの絵は、ジャンピエトリーノが描いた絵をベースにし、修復を加えたものである。彼はダ・ヴィンチの補助者だったといわれている。

ジャンピエトリーノの『最後の晩餐(The Last Supper)』(写真:Giampietrino, Public domain, via Wikimedia Commons)ジャンピエトリーノの『最後の晩餐(The Last Supper)』(写真:Giampietrino, Public domain, via Wikimedia Commons)

 さて、キリスト教徒の間では、『最後の晩餐』は、処刑に遭う前のキリストとその弟子達の食事、文字通り最後の晩餐といわれているが、実は我々ユダヤ教徒の間では次のように考えられている。