政府が留学生受け入れ施策に積極的に取り組んでいる一方で、大学側としてもクリアしなければならない課題はたくさんあります。

 まず海外の留学生にとって日本語習得という大きな壁がありますし、一方で英語の授業をしようとすれば教員の英語力が問われます(ちなみに政府の国家戦略会議では、2020年をめどに外国人教授の数を現在の2倍の4000人に増やす方針です)。

 さらには、閉塞感漂う日本で学んで、果たして将来の華々しいキャリアデザインが描けるのかなども含めて、海外の学生が世界で通用する英語ではなく、ドメスティックな日本語を必死で体得し日本で学ぶ意義を明確にする必要があります。

日本の大学にとってのチャレンジ

 例えば日本の料理学校などは1つの参考になるかもしれません。日本独特の繊細な料理やお菓子の学校は、学費が高くてもアジアからの留学生が増えています。スキルを身につけて帰国すれば、プロフェッショナルとして働けるという出口が明確だからです。

 翻って日本の大学で学ぶ意義はいったい何なのかですが、一般的に言われている日本の強みは、品質管理(5S活動、KAIZEN、TQC=Total Quality Control)や擦り合わせのものづくり精神、ホスピタリティ、教育システムなどです。

 このうち教育論については賛否両論あると思いますが、OECD(経済協力開発機構)のPISA(生徒の学習到達度調査)スコアでも、多くの人口を抱えていて上位にランキングされるのは日本ぐらいで、他国から一目置かれているのは事実です。

 そしてこれから強化すべき分野は、クリエイティビティーやデザイン、イノベーションだとも言われています。

 さらに、できればこれから発展していく国からの留学生をもっと増やすべきです。彼らの母国では経験できない日本的な規範や丁寧さを仕事でもプライベートでも体得すれば、帰国後に事業を興す糧となるでしょうし、経済発展する上で日本との架け橋となり、日本の中小企業の海外進出に大きく寄与することは間違いありません。

 そして何より、アジアの学生にとっての日本で学ぶ意義の大きさを改めて確認するとよいと思います。と言うのも、欧米型の考え方と東洋的な考え方とを上手に取り入れて経済発展してきた国が日本だからです。

 かつ、これからの世界は欧米型の金銭物質至上主義的な発想ではなく、人間中心でローカライズ重視の社会のあり方が問われてくる中で、西洋と東洋の知の融合拠点としての日本は、アジアの学生にとっては自国の文化を生かしつつ先進的なマネジメントを融合させる術を学べる稀有な国ではないかと思います。

中国版世界大学ランキング、米国勢が上位独占 欧州から批判も

ハーバード大学のワイドナー記念図書館〔AFPBB News

 日本にはそのようなポテンシャルがあるにもかかわらず、最近は欧米の有力大学の方が積極的な留学生獲得に動いているように感じられます。

 例えば、中国やインドの富裕層や優秀な学生を確保しようと現地での拠点を置き始めているのは顕著な例です。

 スタンフォード大学は今年3月に北京大学キャンパス内にスタンフォードセンターを開設し、同大学の授業を体験させたりカリフォルニアキャンパスの雰囲気を演出することで、留学意欲の喚起に努めています。

 また、ハーバード大学も今年3月にインドのムンバイにビジネススクールインド校を開きました。そのほか英クィーンズ大学、豪モナシュ大学、ニューヨーク大学なども、中国に1000人以上の新キャンパスを計画しています。