今年の保険点数改正のポイントの1つであった、「明細付き領収書」発行の義務化から1カ月半が経過しました。
このレセプト並みに詳しい領収書について、実施後のアンケート調査で半数近くの患者さんが「不必要」と回答しています。当院でも、「前のままでいいのに、なんでこんな複雑になったの?」と言われることがしょっちゅうあります。一方、「診療内容が細かく分かって助かる」という声は皆無です。(関連コラム「誰が読む?気が遠くなるほど詳細な領収書」も参照ください)
長妻昭厚生労働大臣は、将来、消費税増税などの議論をする時のためにも、医療費の中身を透明にしてお金の流れを見えやすくしておくことが必要、との考えです。
しかし、希望者だけではなく、すべての受診者に細かい明細を渡してチェックさせるのは、いわば全員に医療を疑うことを勧めているようなものです。現場の医師にとっては、信頼関係を築く上で障害になることはあっても、メリットはほとんどありません。
その上、明細発行はお金の流れを見えやすくするどころか、医療費全体のお金の流れをかえって見えにくくしている気がしてならないのです。
医師の「診察料」は、薬剤師の「調剤技術料」よりも安い
多くの人は明細付き領収書をもらっても、項目名を見て、自分が受けた検査や処置内容と一致しているかどうかを確認するだけで終わってしまうことでしょう。
しかし、明細が発行されたらぜひ見比べてほしい項目があります。それは「診察料」と「調剤技術料」の部分です。
診療報酬体系が極めて複雑なこともあり、ケース・バイ・ケースになるのですが、一例を挙げてみましょう。
問診と診察を受けて、胃腸の動きを整える2種類の薬を1カ月分処方されたとします。医療機関の「診察料」は1210円(再診料が690円+外来管理加算520円)です。処方箋代金680円を加えても、合計金額は1890円です。
一方、その処方箋を扱う調剤薬局の「調剤技術料」(薬代金は除く)は2570円になります。
患者に問診して、診察して、処方を決める医師の診察料の方が、薬を詰めて説明をする薬剤師の技術料よりも安い金額に設定されているのです。