マット安川 今回のゲストは、長く政界を見てこられた浅川博忠さん。現在の政局国会への批評から、政党政治の限界、政治評論家の実態などもお伺いしました。

小沢一郎に振り回され、政局国会を続けるだらしない与野党

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:浅川博忠/前田せいめい撮影浅川 博忠(あさかわ・ひろただ)氏
政治評論家としてテレビ・ラジオ、週刊誌などで政治解説、コメンテーターを務める。『小沢一郎 独走す』(東洋経済新報社)、『政権交代狂騒曲』(講談社文庫)など、著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

浅川 最近、私たちの仲間内で話しているのは、これだけのトンネル国会というのはかつてなかった、初めてだなということです。社会保障と税の一体改革は入り口が見えず、だから出口も見えない。

 一番悪いのはやはり野田(佳彦)総理です。または輿石(東)民主党幹事長。つまり国会を直接運営するところにきちっとした能力が備わっていないということです。

 その上、民主党の中は「親小沢」対「反小沢」、自民党も秋の総裁選に向けて谷垣(禎一)総裁を降ろした方がいいのかどうかという、党内の抗争劇プラス与野党の抗争劇で、肝心の政策を横に置いて政局国会になっている。

 特に小沢(一郎)問題に与野党ともに振り回されています。小沢さんが1審で無罪になったため、ゴールデンウイーク明けに輿石さんが大慌てで党員資格停止を解除した。しかしその後、控訴が決まった。

 輿石さんも小沢さんをそれなりに活用する、それが党内融和だ、幹事長はそういうことをまとめるのが第一の仕事だと思っているようで、そこにエネルギーを注ぎすぎている。

 だいたい小沢一郎という政治家は、昭和44(1969)年に大学院生の時に初当選した人で、その44年は田中角栄(元首相)と福田赳夫(元首相)の「角福戦争」の始まる頃です。だから小沢さんは社会人経験がなく、いきなり政界入りしたため、政治とはそういう権力闘争だという観念が強い。

 以来、平成元(1989)年に47歳で幹事長になって以降も梶山静六(元衆議院議員)との「一六戦争」、あるいは橋本龍太郎(元首相)との「一龍戦争」、竹下登(元首相)との「一竹戦争」、小泉純一郎との「小小戦争」など、何とか戦争の一方の旗頭になってきたというのが、足掛け24年の小沢一郎のすべてです。

 与党も野党も、政策よりも政局の政治家に24年も振り回されている。これはだらしなさすぎる。小沢さんはこれから2審に向けて対応しなければいけない。そういう政治家に対して、与党も野党もその存在をもっと小さく扱い、振り回されない知恵が必要だと思います。