ゴールデンウイークを挟んで日本の自動車メーカー各社の2012年3月期の決算発表が続いた。

 このウェブサイトを訪れる読者の方々の多くは経済関連を専門分野とされているはずであって、これらの決算報告に記された数字を確かめることについては、私が出る幕はないだろう。

 ただ、自動車という複雑な資質を持つプロダクツに日々触れている視点から見ると、例えば今期の決算が決して「好調」とは言えない内容であることについて、「東日本大震災と、その後に起こったタイの洪水が影響して・・・」という説明をつけるのは、必ずしも適切ではない。もちろんその影響はあるにしても、もっと根本的なところに生じている「ものづくり組織」としての劣化が、ついに目に見える形で表れてきた、と厳しく見た方がいい。

日本メーカーのほとんどは世界市場で「蚊帳の外」

 まず、世界の自動車市場の中でこの1年間にそれぞれのメーカーがどんな実績を残したのかを整理してみた(表1)。

表1 注:()内は前年比増減を示し、単位は%。ゼネラル・モーターズ、VW、ヒュンダイ、キアは2011年暦年(CY)のデータ。GM、VWグループの日本市場販売台数は「アジア」に含まれる。表中、この2グループの日本販売台数は日本自動車輸入組合の公表値による。ヒュンダイの販売台数には大型商用車も含まれる。
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 会計年度が、日本の8社は3月決算、他国の4社は12月(暦年)決算なので、販売実績もそれに対応した数値を拾ってある。

 ここで明らかになるのは、リーマン・ショックが引き金となった世界的なバブル崩壊から3年、「自動車を買おう」という人々の欲望は再び高まり、世界全体の乗用車市場の活性は「V字回復」という表現が当てはまる状況を見せている、ということ。

 その中にも、ここ2~3年、世界の自動車消費を引っ張ってきた中国市場が飽和状態に達しつつあり、またヨーロッパの特にユーロ圏では通貨不安が消費の足を引っ張り始めた、などの状況が生じている。しかし、新興地域だけでなくアメリカやヨーロッパ(東欧を含む)などの成熟・安定市場も消費は明確にプラスに転じている。

 しかしその中で日本のメーカーは、日産自動車1社を除いて、まさに「蚊帳の外」状態である。お膝元の日本国内は「エコカー補助金」が2010年9月でいったん終了したところで販売が急減速。2011年はその前のリーマン・ショック直後の消費ペースに戻っていたが、再び3000億円の税金を注ぎ込む景気刺激策が12月下旬から始まったことで、4月~3月の決算年度ベースで見れば漸増。それが各社の販売実績に表れている。しかし「補助金頼り」で達成した販売量も、リーマン・ショック前の年間360万~400万台に比べれば、15~20%も減退しているのである。