ロシアの大統領に返り咲いたプーチン氏が、北方領土問題の解決をにおわしている。

 3月4日の大統領選挙に先立つ3月1日、まだ首相の立場であるのだが、一部外国メディアと会見し、日本との領土問題に関する質問に答えた。それについて、読売新聞(3月3日付)は以下のように伝えている。

プーチン大統領の真意を見抜け

大統領選候補者にプーチン氏、ロシア与党

3月4日夜(モスクワ時間)ロシア大統領選挙で当選を決めたプーチン首相〔AFPBB News

 プーチン首相は、北方領土問題について「互いに受け入れ可能な妥協点を探りたい」、また「我々は、大胆に前進しなければならない」と述べ、北方領土問題の最終解決を目指す意向を示した。

 そして、「領土問題の解決が、(日本との関係において)本質的なものではなく、二次的なものになるような状況を作らなければならない」と述べ、日本との経済関係の発展を重視する姿勢を示した。

 なお、氏は、2000年から2008年の大統領在任中、北方領土問題について、1956年の「日ソ共同宣言」が基本との考えを繰り返し、「2島引き渡しで最終決着」とする方針を示していた。

 限られた情報ではあるが、プーチン大統領(5月7日就任予定、以下同じ)の真意は、明らかに「2島返還」である。

 我が国にとって、北方領土問題は、今なお領土ならびに主権侵害にかかわる極めて本質的な問題である。

 しかし、ロシアにとってはすでに解決済みの問題、2次的な問題であるので、早急にごたごたを解消し、自国にとって優先度の高い、しかし自国だけでは成し遂げられない極東ロシアの経済開発を日本の力(資金と技術)を利用して推進したいとの思惑が見え見えである。

 北方領土問題は、歴史を振り返ると、ロシア(ソ連)の不凍港を求めた南下政策と飽くなき領土拡張政策の帰結である。

 直接的には、第2次世界大戦の連合国のうち、米英露3国が戦後処理について秘密協定を結んだヤルタ会談の産物であり、またそれに基づく戦後処理の不完全・不徹底によるものである。さらには、戦後の米ソ対立がもたらした冷戦による現状(ヤルタ体制)の固定化が招いた結果であるとも言えよう。

 そして、ソ連による北方領土の軍事占領と引き続く不法占拠には、後で述べるように、軍事的また地政学的な意図や要求が最大の動機となっていた事実は明白だ。それが、ロシアがあくまで「2島返還」にこだわる理由である。

 ロシアにとって、安全保障は死活的かつ最優先の問題であるので、北方領土の返還については、はなから譲歩する気など毛頭ない。

 しかし、「2島返還」であれば、4島占領によって獲得した軍事的・地政学的利益を失わずに維持できるので、部分的な妥協は可能ということなのである。つまり、ロシアの意図は、4島占領当時から、基本的に変わっておらず、終始一貫しているのである。

 我が国は、この度のプーチン大統領による北方領土返還への言及に対して、決して安易な期待を抱いてはならない。