12月17日に金正日総書記が死去し、三男・正恩が後継者として、この世界で最も独裁色の強い国家を統治していくことになった。

 三男への世襲は、故・金正日自身が決定した既定路線だが、年長者を敬う儒教思想の影響力が強いこの国で、現在28歳の正恩はあまりに若い。そのため、父・正日は特に2010年9月以降、病身にムチ打って後継者の基盤作りに全力を挙げてきた。当面、北朝鮮指導部は、金正日が遺した体制で運営されていくことになる。

 その体制とは、基本的には金日成直系のロイヤルファミリー、すなわち金王朝のメンバーが中心となり、軍の最高幹部が支えていくという集団指導スタイルだ。

 ロイヤルファミリーでは、金正日の実妹の金敬姫・党軽工業部長(党政治局員・大将)とその夫の張成沢・党行政部長(国防委員会副委員長・党中央軍事委員会委員・党政治局員候補)がそれに相当する。

 軍では李英鎬・総参謀長(党中央軍事委員会副委員長・党政治局常務委員・次帥)を筆頭に、金正覚・軍総政治局第1副局長(党中央軍事委員会委員・国防委員会委員・党政治局員候補・大将)、金明国・総参謀部作戦局長(党中央軍事委員会委員・大将)などが相当する。

 中でも金敬姫、張成沢、李英鎬の3名が、金正恩の後見人の“トップ3”と言っていいだろう。

軍を完全に掌握しているとは言えない総参謀長

 ただし、金正日という突出した権力者が不在となった今、その権力基盤は必ずしも安泰ではない。

 北朝鮮は構造的に国民経済が破綻しており、半ば慢性的な食糧危機状態にある。これまでは、そうした失政はすべて誰かのせいにされ、政権幹部が粛清されるなどして責任追及は終わっていた。もちろん金正日の過ちが糾弾されることなど、あり得なかった。

 だが、これからはそうはいかない。新体制下で急に経済が安定するなどということは考えられず、食糧危機などの経済破綻状態は今後も続くことが確実だが、その場合に新指導部はじわじわと責任追及の圧力を受けることになるだろう。金正恩本人に批判の矛先が向かわなくとも、その取り巻きは苦しい立場に立たされるはずだ。