かつて、企業の「広報」というポストは「窓際のポスト」とされていた。全部の広報ポストがそうだったわけではないが、日本的経営の1つの象徴ではあった。

 それが、最近では大きく変わってきている、はずだった。大手金融機関をはじめとして、「広報は出世につながるポスト」という企業が増えてきているからだ。

 しかし、不祥事が起きると広報は、かつての日本的経営の顔を見せる。昔そのままの体質を露呈するのだ。このままでは、再び「広報は窓際のポスト」と言われる時代がやってくるのかもしれない。

かつて広報は「隠す」ことが仕事だった

 なぜ、広報は窓際のポストだったのか。それは、「隠す」ことを最優先しなければならないとされる仕事だったからである。

 その頃、私のような取材者が企業に取材を申し込むと、「ダメ」と言われることが多かった。もしくは、「答えられない」である。なんでもかんでもこの対応なので、広報担当者に共通する口癖ではないかと思ったものだ。

 これは、企業が「まずは隠しておこう」という体質だったからだ。かつての日本的経営の姿勢でもあった。だから、マスコミに対する窓口である広報は隠すことを優先しなければならなかった。

 マスコミ関係者の習性として、ダメと言われて「はい、そうですか」と簡単に引き下がるわけがない。すったもんだのやり取り、それも不毛なやり取りとなる場合も少なくなかった。

 当然、マスコミ関係者に好感を持たれるはずもない。相手に好感を持たれるどころか敵意さえ持たれかねないポストが広報だったわけだ。

 そんなポストを喜んで選ぶ人は極めて少ない。誰もが嫌がるポストだったわけだ。しかも、会社の状況を十分に知らされていないポストでもあった。断るのが前提だから、それなら知らない方が断りやすいからだったに違いない。

 誰もが喜ばない、状況を知らされないポストだから、当然、企業にとって有能な人材を配置するはずもない。本業の中核から遠い人材がやらされることになる。だから、窓際のポストだったのだ。

隠すことは損につながると気づいた企業

 それが急速に変わってきた。何がきっかけだったのかはっきりしないが、確実に変わってきた。有能な人材が配置されるようになり、出世コースとなってきたのだ。

 考えられる理由は、「隠すことが損につながる」という価値観の転換が企業側にあったからだ。