日本の自動車技術は、その大半を素材および部品を納入するサプライヤーが支えている──、筆者はこう認識している。

 自動車メーカーが「新技術を開発」と華々しく発表する事例の多くは、実際の開発作業をサプライヤー中心で、あるいはほとんどの実務をサプライヤー側が行ったという例が極めて多い。

 しかし、同時にサプライヤーは自動車メーカーによって活動を制限されている。部品やユニットごとに担当は細分化され、ブレーキ全体、サスペンション全体、ステアリング系全体といった大きな「括り」でのシステム開発には携われない。そこは自動車メーカーの領域であり、サプライヤーはシステムではなく 分割されたコンポーネンツを開発し、供給する。

 トヨタ自動車とサプライヤーの関係も同様である。サプライヤーがどれだけ高い技術力を持っていても、その行動は常に「下請け」という型にはめられている。これはトヨタにとってだけでなく、日本全体にとって大きな損失である。

 もし、トヨタグループのサプライヤーがシステムごとに協力し、技術力に結束力を加えた形で開発を行ったらどうなるだろうか。

 おそらく今後、トヨタの発想だけでは、新興国対応の安価なモデルや、高価な部品を贅沢に使う欧州車には対抗できない。クルマづくりが完全にルーティーンワーク化、マニュアル化してしまった現在のトヨタ車を見ているとそう思う。

 そこでトヨタグループ内外を巻き込み、システムごとに横串を刺した開発体制の確立を提案したい。この開発体制を、仮に「システム・モジュール化」と呼ぶことにする。

日本の自動車メーカーは「独りよがりな発注スタイル」

 ある欧州の大手自動車部品グループ幹部は、筆者にこう語った。

 「日本のサプライヤーがシステム提案をするようになったら怖い。我々にとって幸いなのは、日本の自動車メーカーが独りよがりな発注スタイルをいまだに取り続けていることだ。個々のサプライヤーは専門分野の知識を豊富に持っているが、それを生かせる開発体制ではない」

 日本の自動車メーカーに部品を売り込んだり納入交渉を行った経験があり、あるいは実際に製品を納入しているという欧州のサプライヤーと話をすると、必ずと言っていいほど、こう言われる。日本流に言えば「餅は餅屋」ということだ。

 これに対して日本の自動車メーカーの購買担当者はこう反論する。

 「欧州のサプライヤーは、設備のリース料まで見積もりに乗せてくる。最低買取数保証も数字が大きい。日本では彼らのやり方は通用しない」